15.気持ちの変化
ぽかぽかと暖かい日差しが気持ち良い昼下がり。
洗濯したシーツを干しながら木刀を振るう実弥さんを盗み見る。
非番の日でも鍛錬を欠かさない実弥さんは、朝から筋トレやら素振りやら、本当にストイックだと思う。
干したシーツの隙間から、そっと覗き見ると整ったお顔に滴る汗がなんとも美しくて見惚れてしまう。
いつもはだけている胸元は逞しく、無数の傷があるが、それすらも逞しく格好良く見えてしまう。
「なんだァ。」
『ひっ、なんでもないです!!』
そんな風にぼーっと見つめていると気づかれてしまいシーツで顔を隠す。
この距離で気付かれるって、、、実弥さんが鋭すぎるのか、私が見つめすぎたのか、、
見つめすぎって、、恥ず、
「おい。」
『ぎぇ!!』
そんなことを考えていると、いつのまにか近づいていたのか、実弥さんにシーツを取り上げられていた。
驚いて変な声を出してしまった、、。
実弥さんはたまにこうして気配を消して近づいて来るから困る。
「んだその声。」
『け、気配消して来ないでください!』
シーツを奪われ、顔を覗き込まれる。
その距離がなんとなく近い気がして、、、整った顔と綺麗な瞳に見つめられるとなんだか顔に熱が溜まってしまう。
「熱でもあんのかァ。」
『えっ、、、あ、、ちが、、』
今度はおでこに手を当てられ、さらに近くまで顔を寄せられてる。
だめだ。かっこいい、、。
「なまえ!!!手紙ダ!!!受ケ取レ!!!!」
『えっ、わたし!?』
実弥さんとの距離に耐えきれず、とうとう目をきゅっと瞑ってしまったところで、間に入ってきた鴉の声に目を開ける。
実弥さんも少し驚いたように私から離れてくれた。
「クソ、誰からだァ。」
『あっ、見ないでくださいよう。』
なぜか心なしかイラついている実弥さんは鴉から受け取った私宛の手紙を読み始めた。
内容を確認し終えたのか、実弥さんはため息ひとつついて私に手紙を手渡した。
『須磨さんからだ!』
送り主を確認すると、先日お会いした天元さんのお嫁さんの1人。
なにやら今度近くの神社でお祭があり、一緒に行かないかというお誘いのようだった。
どうやらその日は天元さん、雛鶴さんとまきをさんが任務の予定なようで、私を誘ってくれたみたいだ。
お祭、お友達とお出かけ、そんなワードを連想し胸が踊る。
いや、待てよ。これはさすがに実弥さんの許可が必要だ。
実弥さんは日暮れにとても厳しい。
この世界に来てからというもの、私は日が暮れてから一歩も外に出たことがない。
日が暮れた後は庭にも出るなときつく、とてもきつく言いつけられている。
でも、須磨さんは確かくノ一だと聞いた。
須磨さんと一緒ならばもしかした「だめだァ。」
ですよね。
『っ、、、やっぱりですか、。』
「黙って行ったりしたらどうなるか分かってんだろォなァ?」
『行きません。絶対行きません。誓います。』
怖っ。
いい子だ、とぽんぽんと私の頭を撫でた実弥さんは再び木刀を持って鍛錬へと向かってしまったのだった。
2019.12.26
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