不死川さん | ナノ

13.かわいいあの子と

『と、いうことがありまして、今回はどのくらいお手伝いができるか分からないんです、、、』


「そうなんですね〜。どいつもこいつも舌足らずで。なまえさんもよくお仕えされますね〜。」



目の前にいるのは”可憐”という言葉がこの世で一番似合うのではないかというほどに美しい女性、胡蝶しのぶ様。




洗濯したシーツを干しているところにやって来たしのぶさんに、今朝の実弥さんとのやりとりを伝えると笑顔の下に静かな怒りが表されていて思わず『すすすすみません!』と頭を下げる。




「いえ、不死川さんに振り回されて本当にお疲れ様です。人手はいくらあっても足りないくらいなので、少しでも手伝いに来てくれてありがたいです。」


そう言って、今度こそにこりと可憐に微笑むしのぶさんは本当にお美しい。




蝶屋敷にて、お手伝いをさせていただき始めたのは2ヶ月ほど前のこと。

実弥さんが数週間にわたる長期任務に出た際だった。
その間、私を一人で屋敷に置いておきたくなかったのか、突然蝶屋敷に連れてこられ、手伝いということで住み込みで働けと実弥さんに命じられたのが始まりだ。

あの時は突然でびっくりした。そして突然きたわけのわからない私なんかを受け入れてくれた、しのぶさんを始めとした蝶屋敷の方々の懐の深さに脱帽したのを覚えている。


それからというものの、実弥さんの長期任務の際には常にお手伝いに来させてもらっている。




しかし、いつもは長期任務だと長期任務とおっしゃってくれる実弥さんが、今日は何も言わずにただ蝶屋敷へと行くようにだけ言って出ていかれたため、どのくらい蝶屋敷でお手伝いができるのか分からず終いだ。






「しかし、なまえさんもよく不死川さんの女中なんてできますよね〜。」



かわいい顔して、というやつだろうか。しのぶさんはたまに、いやしばしば毒舌だ。

にこにことかわいらしい笑顔で毒舌を吐くしのぶさんに、シーツを干す手を一瞬止めて思わずふふっと笑ってしまった。



『いえ、お優しい主人にお仕えできて私は本当に幸せ者です。私の方こそ、頼りない女中で申し訳ないと思っております。』



「あら。不死川さんに優しいなどいう方は初めてです。」



なんて、しのぶさんは本当に不思議、と言ったようにおっしゃった。



その様子が、なんともおかしくてシーツを干しながら再び笑ってしまう。



実弥さんはあんな風だがら、誤解されやすいのかもしれない。




『まぁ、ちょっと、怖いときもありますけど。』



なんて本音をこぼすと、しのぶさんは今度はふふふっといたずらっぽく笑った。


なにがそんなにおかしいのか、不思議に思い目を向ける。




『何がそんなにおかしいんで、、す、、え、、あっ、、えっ、!』



「なまえ。俺の陰口たァいい度胸じゃねェかァ。」




えええええ。


振り返ると、そこにはバキバキと指を鳴らして笑う実弥さんがいた。



『えっ、あ!その!違うんです!あぁ!しのぶさんっ!!!』


「おら。帰ってからじっくり聞かせてもらおうかァ。」


『い、いや!下ろして!下ろしてくださいーー!!!』



「なまえさーん!また来てくださいね〜!」



なんて手を振るしのぶさん。軽々と実弥さんに担ぎ上げられ、手を伸ばして助けを求めるが、しのぶさんを含め誰も助けてはくれなかった。

2019.12.23
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