笑顔の先



『ちょっと寝ぼけちゃってただけだよ!!』




えへへ。なんてへらへらと笑っているのは先ほどまで涙を流していた相棒。


朝食に遅れたことについて心配していた仲間たちは、その姿に安堵の表情を見せている。




その言葉に、何がだよ。と内心思うが、仲間を心配させまいとするあいつの癖は昔からで。


それに、本当の姿を、泣いた顔を俺だけに見せてくれるのだと思うと悪い気にはならない。








「なまえ、体調でも悪いのかと思ったよ。今日も元気そうね。」



『全然だよ!!今日も万全!!!』






笑顔で仲間と話すなまえの姿を眺めながら、見たと言った悪夢について思い出す。





ペニーウォートでの日々。


自由も、生活も、命さえも、何もかもをミナトに握られ過ごした日々。






なまえを、守れなかった悔しさ。







あいつにとっての地獄とも言える日々は、今もなお悪夢となってつきまとっている。






そんなことを考えていると、朝食を終えたなまえがこちらにやってきた。






『ユウゴ。』





「どうした?」





『いや、その、朝ごはんちゃんと食べたよ!』





だからもう心配するなと言いたげに言ってきた言葉に、自分が顔をしかめていたことに気づく。





「あぁ。今日もたのんだぞ。」




『うん!!』





くしゃ、と頭を撫でると太陽のような笑顔を浮かべるなまえ。




純粋にかわいい。と思ったと同時に、この笑顔を守りたいと強く思った。



もう二度と、なまえを傷つけさせまいと。





2019.7.28