7 温度






『こ、紅炎様…』





私のすぐ後ろに立っていた紅炎様。




いつも通りの無表情だが、その目はいつもより冷たい。







「あー、おもしれー!な!紅炎!こいつ俺にくれよ?」





紅炎様とは正反対で、にこにこと楽し気な雰囲気の神官様は、先ほどと変わらない調子でそう言った。












「悪いが、こいつはやれん。」




ぞくり。



『っ、』




「お、おう…」







その声は、紅炎様のお返事なさった声は、あまりにも低く、冷たかった。






その、なんともいえない冷たさに、神官様も少しうろたえているご様子だった。









『…!』





がしっ、と私の手首を掴んだと思うと、紅炎様は何も言わずに神官様に背を向け、すたすたと歩き出した。










握られた手首が、熱くて痛い。







紅炎様の歩くスピードが早く、それに着いていけずに転びそうになるのをぐっと踏ん張りながら着いて行く。











まずいことをしてしまった。








神官様に誘われたからとはいえ、仕事中に遊んでいたのだ。









先ほどの場面を思い出し、目に涙が溜まる。









紅炎様の、あんなに冷たい目は、冷たい声は初めてだ。









掴まれた手首の痛みも合わさって、どんどんと目に涙が溜まるのを感じるが、泣いてはいけない、とぐっと堪えた。










すれ違う人達は何事かと私たちを見る。








手首を掴み、引っ張られながら歩いた紅炎様のお部屋までの道のりは、どんなときよりも長く感じた。



2014.3.3

ひな祭り!



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