2 静寂





同じ部屋の同僚のハルちゃんと、先輩に紅炎様の朝ごはんを運んでもらい、その後ろに私は自分のごはんを持って運んだ。






時折、ハルちゃんと先輩は後ろを振り返って私を見、クスクスと笑うのだ。








『笑わないでくださいよ!』




「だってなまえ、なに自分の朝ごはん持って歩いてんの。」







人の気も知らずに、2人は楽しそうだ。










私はというと、まず、自分の朝ごはんを食堂に取りに行ったときに周りの侍女の先輩方に変な目で見られるわ、今こうやって歩いているときも変な目で見られるわで最悪だ。






唯一事情を知っているこの2人こそ笑っているものの、このことを悪く思う人だって必ずいる。




というか、他の先輩にばれたらかなり怒られるだろう。







第一皇子と、第一皇子の部屋で、朝ごはん。








ありえないことだ。









そんなことを考えていると、すぐに紅炎様の部屋の前まで来てしまった。







コンコンとノックをすると、今度は「入れ。」という声がした。










ハルちゃんと先輩が、紅炎様の机にごはんを並べ、私は自分のごはんを横にある小さなテーブルに置いた。








「失礼しました。」と2人が頭を下げて出ていくと、紅炎様と2人だけになってしまった。









書類へと目を通しながら、朝ごはんを食べる紅炎様。







いや、絶対私場違いだろ。





静寂に包まれた部屋の中で1人緊張と戦う私。こんなに味のないごはんは初めてだ。






かなりメンタルにくる状況に、やはり紅炎様は怒ってらっしゃるのだろうかと思ってしまう。






卵焼きを食べ、音を立てないようにみそ汁を啜る。







チラッと横目で紅炎様を見ると、あろうことか目が合ってしまった。







すかさず目を逸らすと、「なまえ。」と低い声で呼ばれた。





『は、はいっ。』




「なぜ目を逸らす。」



『あ、いえ、その…』






どうしよう。どうしようどうしよう。



こういう場合はなんて答えたらいいのだろうか。


無い脳みそに考えを巡らせるが、全く思い浮かばない。








「ふっ、やはり飽きない。」




『え?』




「なんでもない。早く食え。」




『はい!』






なにが面白いのか、紅炎様はふっと笑ってから、またごはんを食べ始めた。











あぁ、朝から本当に心臓に悪い。


私が早死にしたら間違いなく紅炎様のせいだ。






2014.2.28




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