28 ひだまり




ぽかぽかと気持ちの良い日差しが差し込む中庭。


昨日一日中部屋で寝ていたせいか、いつもの日差しが身体に染み込むようで心地が良かった。






『よし。』




気合を入れ直し、中庭の掃除をする。




今日はまだ病み上がりということで、紅炎様の身の回りのお世話はハルちゃんや先輩方にお願いした。



快く引き受けてくださった先輩方とは違って、ハルちゃんの表情は少し暗かったが。





ーー「なまえ、紅炎様に会いたくないの?」






ハルちゃんに今朝言われた言葉を思い出し、苦笑してしまう。



会いたくないんじゃなくて、会ってはいけない気がするのだ。




私はこのまま、紅炎様のお傍にお仕えしてていいのだろうか。



私は、わたしは…











「なまえってばっ!!!」




『はっ!あ!こ、紅覇様!』




「なにぼーっとしてんのさっ。」





考え込んでしまっていたのか、紅覇様に呼ばれていたことに気づかないなんて




『す、すみません…』




「も〜…体調崩したって聞いたけど、大丈夫?」






そう言って私の顔を覗き込む紅覇様はなぜか少しにやけ顔。







『ど、どうかされましたか…?』




どうしてにやけているのか、何かあったのかと尋ねると、紅覇様はまたさらににやりと笑った。






「いやあ、大丈夫ならいいんだよ〜
なまえがいない間、炎兄の元気なかったからさ!」





『…』







紅覇様のお言葉に、顔が熱くなる。



しかし、同時にとても重い気持ちになってしまう。




紅炎様…









「あれ?なまえ?」




『は、はい?』





先ほどとは逆に、不安げな表情をした紅覇様に首を傾げる。






「う〜ん…」



『えっ、なんですか。』



「うーーーん…」



『えっ!?えっ!?』





紅覇様の深くなる悩み顔に、どうしたらいいかわからずあたふたしてしまう私を紅覇様はじっと見つめていらっしゃった。







「なまえ、炎兄となんかあったの?」



『…っ。ど、どうしてですか?』



「反応、違ったからさ。いつものなまえだったら、さっきみたいなこと言うと、顔真っ赤にさせて照れるしぃ〜」




そ、そんなことない!はず…




「今のなまえ、すっごく暗いよ。」



『…っ!』







やっぱり。と言った表情で迫ってくる紅覇様。




しかし、なにも心配させてはならない。



ましては紅覇様だ。紅炎様に言ってしまうかもしれない…






『な、なにもありません…』


「だーめ。ちゃんと言って!」




そう言って、後ずさる私を捕まえようと手を伸ばした紅覇様。





『いっ!!』




掴まれた左腕。火傷を負った左腕に激痛が走り、短く悲鳴を上げ、その場にしゃがみ込んでしまった。




「なまえ!?」





急にしゃがみ込んで苦しむ私の左腕をとり、優しい手つきで袖をめくった紅覇様は、そこにある包帯に巻かれた腕を見て、重い表情をなさった。





紅覇様に。

大好きな紅覇様に、こんな表情をさせてしまった。




「なまえ、話してくれるよね?」




心配と怒りの混ざった瞳に見つめられ、必死で堪えた涙が一筋溢れてしまった。







2015.3.23



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