19 星をつかんで




『し、失礼しましたっ!』






頭を下げ、逃げるように部屋を出て行ったのは第一皇子がそれはそれは大事にしていると有名な少女。






そして、その姿を目に入れるのは不機嫌な部屋の主。






「紅炎殿、あまりなまえを困らせると嫌われてしまいますよ?」




「うるさい。」







その、拗ねたような表情がなんとも子供っぽかったので、つい笑ってしまった。







先ほど少女、なまえが運んできた茶を啜ると、口に広がる香り。




なまえの淹れるお茶は美味しい。これは宮中ではかなり有名なことだ。








「なまえは優しい子ですし、好いている者もいるでしょう。」





まあこの城でなまえに手を出すなどという勇者はいないと思うが。



そんなことしたら、間違いなく第一皇子に殺されてしまうだろうからだ。










「白龍か。」




「え?なぜです?」





紅炎殿の口から出てきた自分の弟の名前に目を丸くし、驚きと疑問を持った。





「なまえが先ほど白龍と喋ったと言っていた。」




「そうでしたか。」







なるほど。


その一言で、なぜ白龍が出てきたのかという疑問だけではなく先ほどのなまえの泣きそうな顔の理由もなんとなく分かってしまった。








本当に、この方は。





大方嫉妬でもしてそのままなまえにぶつけてしまったのだろう。










「なまえは。」




「…?」




「あいつは、どうしてあんなに馬鹿なんだ。」





そう言った紅炎殿はきまりが悪そうな顔をした。




なまえに何をしたのかは分からないが、少しは後悔をしているのかもしれない。







「なまえには、ちゃんと言わなければ伝わらないでしょうね。」





確かに、紅炎殿のなまえのお召し様は誰から見ても溺愛されていると言っていいほど。





それを本人が気づかないというのは相当だ。










「俺にここまでさせるとはな。何様のつもりだ。」








女なんていくらでも向こうから寄ってくるものだろう。なんてやはり不機嫌そうな紅炎殿に、今からしようと思っていた話は諦めて部屋を出た。






この人に、今何を話してもちゃんと聞いてくれそうにはないと判断したためだ。







辺りはとっくに日が落ち、夜に包まれる煌帝国。





満月とまではいかない、中途半端な月が禁城を照らしていた。






2013.3.27

わ、わわわかりにくいと思いますが白瑛姉さん視点です…

わかりにくくてごめんなさい!



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