20 小さな花
「なまえみ〜っけ!!」
『げ、紅覇様…』
お昼過ぎ、中庭の落ち葉を掃いていると、かけられた声に振り向かなくても誰かわかってしまった。
「げ、ってなんだよ〜僕に会えて嬉しくないっての〜?」
『いやー、めちゃくちゃ嬉しいですよ〜。』
「棒読み!!」
目の前でにこにこと笑う紅覇様は、紅炎様の弟君であるが、その目は紅炎様とは違い大きくてきらきらと美しい。
紅覇様は、嫌いではないが少し苦手。
たまにカエルの死骸などを持って追いかけられるからだ。
「も〜、今日はなんにも持ってないから!」
『ほ、ほんとうですか?』
ほら!と両手を広げてその場でくるりと回る紅覇様からは甘い香りがした。
「なまえは炎兄のお気に入りだからねぇ。いじめたりしないよ。」
『は、はい?』
お気に入り?うーん…
「ん?どうかした?」
『いえ、その…』
紅覇様のお言葉に悩む私の姿を見て今度は紅覇様が頭を傾けた。
『こ、紅炎様は、よくわからない所で不機嫌になります。』
そう、この前の白龍様のことだって。
あの時、白瑛様がいらっしゃらなかったらどうなっていたか分からない。
白瑛様となにか楽しいお話でもしたのか、あの後は普通にいつもの紅炎様で、特に怒ってらっしゃる様子もなかったのだが。
「例えば?」とお聞きになる紅覇様にそのことを話す。
紅覇様なら共感していただけるだろう。
「あっはは!!それはなまえが悪いよ!」
『えええっ!なぜですかっ!』
共感どころか私が悪いと仰る紅覇様に頬を膨らました。
「なぜってなまえ、わかんないの〜?」
『紅炎様のお考えになっていることなんて、なに一つ分かりませんよう。』
紅覇様はお分かりになるのか。さすが兄弟。
「炎兄も大変だねぇ。」
『は、はいぃ?』
うんうん。と一人納得なさる紅覇様に全くついていけない私。
やっぱりわからない。
紅覇様も、紅炎様も。
2014.3.30
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