1 まぶしい





煌帝国の朝。


あちらこちらで、侍女たちが行き交う中、一際急いで廊下を進む。






まずい。


完全に寝坊をしてしまった。





いつもよりかなり遅く起きてしまったので、朝ごはんも食べずに部屋を出て、仕事へ向かう。




今すぐにでも走りたいのだが、それをすると先輩方に怒られてしまう。









『はぁ…っ』





やっと着いた。




すーはー、と深呼吸をし、息と服を整える。






よし。





コンコンとノックをするが、返事はない。





それもそのはず、私の朝一番の仕事はこの部屋の主ーーー



煌帝国第一皇子、練 紅炎様を起こすことなのだから。







ガチャリ、とドアを開けて中に入る。




『紅炎様!おはようござ、』




「遅い。」





ですよねー。





『も、申し訳ございません…っ!』





さすがに、起きていらっしゃるか。



深々と頭を下げ、謝罪をする。









『す、すぐに朝ごはんをお持ちいたします!』




「あぁ…なまえ。」




『はい…?』





ちょいちょいと無表情で手招きをする紅炎様。



少し怖いが、従うしかなく、ゆっくりと近づく。








「寝坊か?寝癖がついたままだ。」




そう言って、髪を撫でられた。



その距離が近くて、顔に熱がたまる。





『っ、はい。すみません。』






紅炎様の侍女となり、お側に仕えるようになって、あまり日は経っていないが、毎日仕えているとわかることもある。






この顔は、怒っていない。




よかった。






「飯は?」




『ま、まだです。』





相変わらず私の髪を撫でている紅炎様。





少し考える素振りを見せた後、ひらめいたように言った。






「俺の分と一緒に、お前のも持ってこい。」




『はい?』





こ、紅炎様は私の朝ごはんも食べるというのか。や、や、やっぱり怒ってらっしゃるのだろうか…っ!







「おい。」




『は、はいっ!いてっ!』




今度は頭を小突かれた。痛い。







「今日はお前もここで食え。」




『え?いや、それは、』




「命令だ。」




『は、はい!かしこまりました!』



だ、だから小突かないでください!




と頭を下げて部屋を出る。







さっきの言葉は撤回だ。












やっぱり、紅炎様はわからない。








2014.2.28





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