17 かき氷





「それで、今までどこでなにをしていた?」






人目も気にせずずんずんと歩く紅炎様に担がれ、連れて来られたのはもちろん紅炎様のお部屋。






部屋に入り、地面に降ろされると同時に投げかけられた質問。







『え、えっと…』







言えない。





書物に夢中になっていたなんて言えない。





そんなことばれたら絶対怒られる!




いや、もう既に怒られているのだが。









「俺に言えぬことか。」




『っ!!!』






正直に言うべきか否かを悩んでいると、急にその距離をつめられ、目の前には紅炎様の不機嫌全開のお顔があった。





ーー近い近い近い







『ち、ちがいます!』






そうではなくて、と首を横に振りながら後ずさるが、その分また距離をつめてくる紅炎様と背中に当たった壁にもう私の逃げ場はなくなってしまった。






正直に言う、ということ以外のいい案は結局見当たらない。











『こ、紅炎様!これを…!』





意を決して、後ろに隠していた巻物をひとつ、紅炎様に差し出す。






「…」





明らかに、頭に?を浮かべた紅炎様はとりあえずその巻物を手に取ってくださった。





同時に、少し開いた距離に心を撫で下ろす。







『紅炎様が、読みたいと仰っていた書物を探していました…。』




「…」




『それ自体は無かったのですが、内容は似ているかなと思いまして…』







黙って巻物に目を通す紅炎様。





心なしか、その表情が少し和らいでいったので、私の緊張も少し和らいだ。








「よい書物だ。後で読むとしよう。」




『…っ!はい!』






そう言って、私の頭をぽんぽんとしてくださった紅炎様の表情からはもう不機嫌さはなかった。








「だが、」




『は、はい…?』






助かった。と思ったのも束の間、紅炎様の発せられた声に、嫌な予感を覚えた。











「本当に、これを探すためだけか?」




『う、』






み、見破られている…。完全に。








『わ、ち、近いです!近いです!』







再びつめられた距離に一旦落ち着いた心はさらに焦りと恐怖でぐちゃぐちゃだ。







『す、すみません!言います!』





言いますから離れてください!と慌てる私に、紅炎様は少しだけ、ほんの少しだけ距離を開けてくださった。








『しょ、書物を探していて、少しだけ内容を確認しようと思ったのですが、気づいたら夢中になっていて…ずっと倉庫で読んでいました…』






すみませんでした!と深く下げた頭を上げると、盛大に溜め息をおつきになった紅炎様は完全に呆れ顔。







『…いたっ!』




「茶を持って来い。」



『はいぃ!』





最後に頭を小突かれ痛かったが、命じられた仕事に喜んで部屋を出た。






2014.3.22






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