14 ぽつり、ぽつり
ごろごろ、どかん。
『きゃっ』
一際大きな雷に、書物に集中しきっていた意識が戻る。
書物に集中しすぎて気づかなかったが、外ではごろごろと空が唸り、ざあざあと雨の音がうるさかった。
やってしまった。
そう思ったときには遅い。
紅炎様が読みたいと仰った書物を探すため、このめちゃくちゃ古い小さな倉庫に足を踏み入れたのは朝食の片付けをしてすぐのことだった。
倉庫の中には、たくさんのそれはそれは古い書物があり、ちょっとだけ目を通すつもりが、我を忘れて夢中で読んでしまっていた。
どのくらいの時間ここにいたのかは分からないが、ここへ来た時には雨は降っていなかった。
そして今日は、昼過ぎから雨が降るから洗濯物は外に干すなと侍女長が仰っていた。
さらに、ぐぅと鳴ったお腹に、相当長い時間ここにいたのだなと呆れてしまった。
書物を探すなど、誰にも言わずに来てしまったのでハルちゃんあたりが私を探しているかもしれないと、腰を上げようとしたが、さらに大きな雷にしゃがみこんでしまった。
正直、雷は、怖い。
少し収まるまで待とう。
そう開き直って、倉庫の隅に腰を下ろした。
「なまえ殿…?」
『え、あ、白龍様!!』
がちゃりと扉が開く音と、呼ばれた名前に顔を上げると、そこには髪の毛に雫をつけた白龍皇子が立っていらっしゃった。
突然のことに、目を丸くする。
どうして、ここに?
そう思ったが、それは白龍様も同じだったようで、なぜここにいるのかと問われ、訳を話した。
『は、白龍様!?』
「なんですか?」
あろうことか、私の隣に腰を下ろした白龍様。
『お、お戻りください!ここは寒いので、お風邪をお召しになられたらいけません!それに…』
懐からハンカチを取り出し、失礼だとは思いながらも白龍様の髪の毛に付いた雫を拭う。
本当に、風邪をお召しになられてはいけない。
「なまえ殿がここにいるなら、俺も付き合いますよ。」
『そ、そんな…』
「俺がそうしたいんです。」
そう言って、にっこりと笑った白龍様は心なしか頬が赤かった。
整った顔立ちは白龍様のお姉様である白瑛様同様美しい。
どうやら、白龍様は私がここから出ないのではなく出られないということが分かってらっしゃるようだ。
その上で一緒にいてくださるのだろう。
なんとも申し訳がない。
「その代わり、なにかお話をしてください。」
『お話?』
お話をと言われ、本のことを話そうとすると、そうではなく私の話をしろと仰った。
『わ、私のですか?』
「はい。好きな食べ物の話など、なんでもいいですよ。なまえ殿のこと、もっと知りたくて。」
そう言われ、顔に熱が登るのを感じた。
言われた通りに、好きな食べ物や動物の話をして、こんな話面白いのかと思ったが、うんうんと笑顔で相づちを打ってくださる白龍様はどこか満足そうだった。
2013.3.14
このお話は実は白龍の短編からなのでよかったらそっちも読んでください!
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