12 その手を開いたら




「なまえ大丈夫?顔色悪いよ。」





『そうかな?大丈夫よ!』






昔の夢を見てしまった。





気分が悪い。
身体の震えを隠すのに精一杯だ。






きもちわるくて、トイレで盛大に戻してしまい、朝ごはんも口にすることができなかった。







それでも仕事を休むわけにはいかない。





心配するハルちゃんに、えへと笑ってみせると気持ち悪いと言われた。失礼な。









鮮明な夢に、頬についた血の冷たさを思い出してしまい、何度も何度も顔を洗った。






それでも取れない感覚に、震える手。







消せない過去を引きずりながら歩く廊下はとても寒く感じた。








『紅炎様。おはようございます。』




「おはよう。」




コンコンとノックをし、中に入るとすでに椅子に腰を掛けた紅炎様。





遅かっただろうか?


しかし、特に怒ってはいらっしゃらない様子。







震える手がばれないように朝食を机に置く。





紅炎様は書物に目をお通しになっているので多分大丈夫だ。









「なまえ?」



『はい?』



「いや、なんでもない。」





なにか言いたそうな紅炎様だったが、言うのをお辞めになったのでそのまま失礼しましたと部屋を出た。







朝食を片付けに行くまでに少し時間があるので、また顔を洗った。




気持ち悪い。



震える手に自分の弱さを感じる。




この手で紅炎様の髪の毛を結うことはできるのかと心配だが、やるしない。




『よし。』と気合を入れて、手をふらふらとさせてみた。














『失礼します。朝食の片付けに参りました。』




少しを時間あけ、再び訪れた紅炎様の部屋。






『あれ…』




しかし、そこにはもうなにもなく、朝食はすでに片付けられていた。





それだけではなく、紅炎様の髪の毛も結われている。






「なまえ。」



『は、はい!』




何故だ、と首をかしげていると不意に名前を呼ばれた。






「書庫へ行こう。」




『…?はい!』





こんなに朝早くから?



少し疑問に思ったが黙って後ろをついていくことにした。




2013.3.13





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