25 あかいろ





「なまえ、貴女が派手なものを身につけていると聞いたのだけれど…」




高価なものなのだろうけど、別にそこまで派手じゃないわね。と、目の前で笑うのは私の上司にあたる侍女長だ。






素敵ね。と、私の髪留めを見て笑う侍女長は、理解のある本当に立派な大人の女性だ。







『ありがとうございます。お騒がせしたようですみません。』





「いいのよ。大事な物なんでしょ?付けてて構わないからね。」




『はい!』






よかった。と胸を撫で下ろす。



紅炎様のご命令だ。髪留めは外せない。それに、外したくない。







紅炎様から頂いた髪留めは毎日身につけるようにしていた。





侍女長も言う通り、そんなに派手なものではないはずなのに、侍女長に告げ口をする人もいるんだなと思うと少し悲しい。








今朝侍女長と話したことを思い出しながら、紅炎様のお部屋へとお茶を運ぶ。












「ちょっと、あんた。」





『はい?』





かけられた冷たい声に振り向くと、見覚えのある女性が2人立っていた。




じゃらじゃらと派手な髪飾りが特徴的な、私よりも三つか四つほど歳上の女性たち。




この前中庭で会った姫様の侍女2人だ。










『な、なんでしょう…?』




なんともいえず冷たい雰囲気の2人に、少し怖さを覚えた。






「なに派手なもんつけてんの?」





そう言って髪留めを指さされた。





そうか、侍女長に告げ口したのはこの方たちかとぼんやり思ったが、それよりも髪飾りに目がいく。





そっちの方が派手じゃん。








「なに、不満なの?」






心の中が顔に出てしまっていたのか、1人の女性から出た言葉は鋭かった。







「あんたさ、紅炎様に媚売ってるでしょ?目障りなんだけど。」





『いっ!!』







がしゃん。





肩を押され倒れた拍子に持っていたお盆から落ちたお茶は手の上にこぼれ、湯のみはそのまま割れてしまった。






あつい。いたい。









そんな私の姿を満足そうに見た2人は、ケラケラと笑いながら去ろうとする。






『ま、待ってください!!』




「ん?」





振り向いて睨みつけられる目は本当に鋭くて怖い。






『私は、ここを片付けるので、こ、紅炎様のお部屋に、お茶をお願いします…』





「…分かった。」






そう伝えると、少し目を見開いた女性たちはまた、すたすたと行ってしまった。








残された私にあったのは、お茶で濡れた制服に、割れた湯のみ。





雑巾で床を拭き、割れた湯のみの破片を拾う。





『いた。』




破片で指を傷つけてしまった。痛い。






こみ上げてくる涙に、気づかないふりをして歯を食いしばり無心で床を拭いた。




2013.4.9

鯉吹さんと魅宇萌さんのリクエストにて、とりあえず主人公ちゃんをいじめてみました!
さて、これからどうなるのか…
リクエストありがとうございました!



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