マギ短編 | ナノ

包み込む






「なまえ…」





瞳に映る、愛しい人。






その姿を捉えた瞬間、今にも抱きつきたいという衝動に駆られるが、できない。










地下に閉じ込めていた、敵国の捕虜を1人、殺した。



なぜ殺したんだっけ。

理由は忘れた。





ただ、血を浴びるのは好きだ。









服や髪の毛、顔にまで飛び散った返り血を浴びた僕を、人々はいつもと同じ様に見る。







もう僕が何をしたって、みんな驚かなくなった。
















『こ、紅覇…!大丈夫?なにがあったの?』







ぼーっとなまえを見つめていると、僕に気づいたなまえがぱたぱたと慌ててこちらに走ってきた。






なまえ。僕の愛しいなまえ。







抱きつきたい。



でもなまえに血が着いてしまうのは嫌だ。






なまえに汚い血が付くのは嫌だし、なまえは血が嫌いだ。














『こ、紅覇…ケガとかしてない、よね…?』






何も言わない僕の顔を、なまえは懐から出したハンカチで拭おうとする。






その行動を制するために、ぱっと腕を掴んでしまった。






「あ、ごめ…」






なまえのハンカチを汚さないようにと腕を掴んだが、そのせいで手についた血でなまえの腕を汚してしまった。





ぱっと腕を放す。







あぁ、洗わなきゃ。


なまえに汚い血が付いてしまった。












「っ!なまえ!」








それでもなお、驚いたことになまえは僕の顔を拭おうとする。





その手は力無く震えていた。








「血、怖いんでしょー?やめなよ。それに汚いしぃ。」







その言葉に、ふるふると首を横に振ったなまえ。




その瞳は今にも泣き出しそうだ。







なんともいえない表情に少しゾクゾクしたが、それよりもこんな顔をさせてしまっている自分が腹立たしい。








そして先ほどから震えているなまえの身体を、思い切り抱きしめてやりたい。










「なまえ、ごめん。」




『…?』




「顔、洗ってくるから。」




『う、うん。』



「それで、お風呂入って服も着替える。」




『うん。』




「だから、」








その後に、抱きしめさせてください。



そう言った途端、ぼっと顔を赤くするなまえ。








血を浴びるのは好きだし、人を壊すのも好きだ。







でもやっぱり、なまえが一番すき。





真っ赤な顔で、口をぱくぱくとさせるなまえに、部屋で待っててと告げ、早足で風呂へと急いだ。






2014.3.10

なにこれ笑



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