繋いで
シンドリアの風は潮の匂いがして心地よい。
シンドリアが一望できる丘の上に立ち、目を閉じる。
優しい風は頬を撫で、髪の毛を遊ぶ。
耳を澄ませば街の人々の声と波の音。
全てが優しい、この国が好きだ。
「それは嬉しいな。」
『し、シンドバッドさんっ。』
びっくりした、と言うと、逆になぜ気づかないのかと言われた。
それもそうか。
そして、心の声が漏れてしまっていたことにも少しびっくりだ。
「そうか、なまえはこの国が好きか。」
私の頭をぽんぽんと撫でながらシンドバッドさんはそう呟いた。
私だけではない。
この国に住む人たち全員がこの国を愛しているだろうと思う。
この国と、シンドバッド王を。
「抱きしめてもいいか?」
『そ、そういうことは聞かないでください。』
悪い悪いと笑い、シンドバッドさんに後ろから抱きつかれる。
絶対悪いと思ってないな。
前に、シンドバッドさんは人をからかうのが好きなのかと聞いたら、なまえの反応が好きだと言われたことがある。
「ん?なんだ?」
『な、なんでもないです。』
そのときのことを思い出してしまい、少し顔に熱がたまった。
「なんだ、こんなので赤くなるのか。かわいいな。」
『う、うるさい。』
シンドバッドさんは簡単にそういうことを言うから困る。
腕の中でくるりと向きを替え、顔を隠すようにシンドバッドさんの胸に埋める。
どくんどくんという心臓の音は通常通り。きっと私のはこれよりも3倍は早いんだろうなと思った。
時間は平等に流れることを知っている。
だからせめて、この幸せな時間が少しでも長く続けばいいなと。
そこではじめて自分の腕もシンドバッドさんの背中に回すと、嬉しそうな笑い声が聞こえた。
2014.2.21
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