6 はじまりの合図



「「「神官様、おかえりなさいませ!」」」







やばい。思ったより、やばい。









ジュダルの絨毯に乗ってやって来た煌帝国。







その、大きな門をくぐるとたくさんの人がお出迎えをしてくれた。






ジュダルの後ろを小さくなってついていく。





なんというか視線が痛い。





顔を下げてお辞儀をしている従者の方達も、ジュダルが通った後に顔を上げて私を見た。











「すげーだろ?俺!」





ジュダルは嬉しそうににこにこしていた。





うん。正直、すごい。






それほどの役割を果たしているんだなと思った。









「神官様。」




「ん?なんだ?」




「紅炎様がお呼びです。」








んー、と少し考える素振りを見せた後、近くにいる侍女さんに何かを話すジュダル。





「わり、すぐ行くからお前先部屋行っとけ。」




そう言ってぽんぽんと私の頭を一撫でし、地面を蹴って飛んで行ってしまった。








えっと…




1人になった私は、どうするというのか。








「なまえ様、お部屋へ案内いたします。」





そう言って近づいてきたのはさっきジュダルと話していた綺麗な侍女さんだった。





『は、はい!お願いします。』






お荷物お持ちいたします。と私の荷物を持とうとした侍女さんに、『私、そんな偉い人じゃないので自分で運びます!』と断ると、驚いた顔をされた。

















「あなた、もしかしてなまえ…?」





侍女さんの後ろをついて歩いていると、不意に声をかけられ、振り向くと私と同じか少し歳上の女の人がこちらを見ていた。






大きな目に赤い綺麗な髪の毛のとても美しい女性だ。







『は、はい!なまえといいます。今日からお世話になります。』





そう言って、深く頭を下げる。






「ふふっ、ジュダルちゃんから聞いているわあ。私は練 紅玉。よろしくね。」






そう言ってにっこりと笑った笑顔が可愛らしくて、思わず見惚れてしまった。

















「なまえ!」





『あ、ジュダル!』







見慣れた顔に、ほっと安心する。







「やっと見つけた。…ん?ババアと話してたのか?」





「もう、ババアじゃないわよ。じゃあね、なまえ。またお話しましょう。」





そう言って紅玉さんはひらひらと私に手を振り、去って行った。







ババアとは、紅玉さんのことなのだろうか。



どこがどうババアなのか尋ねると、化粧が濃いとジュダルは言った。



あんなに綺麗な人に、失礼極まりない。











「紅炎が、ひと段落ついたらお前を連れて来いってさ。」





今度はジュダルと2人で侍女さんの後ろを歩く。




さりげなく私の荷物を持ってくれた。





『紅炎さん?』




「あぁ。第一皇子で、次期皇帝だ。」




『え、』





そんな、偉い人の所に…





まあ、お世話になるんだから、それくらい当たり前か!



しっかり挨拶しなければ。









「あ、ちなみにさっきのババアは第八皇女な。」




『えっ!?』







そうだったのか…




し、失礼は無かっただろうか。









「こちらでございます。」





そうこうしてるうちに、私の部屋に着いたみたいで、侍女さんは一礼してから戻って行った。







「なんだよ、俺の部屋から遠すぎだろ!」






ジュダルがわーわー言っている横を通り、部屋に入る。





小さい部屋だが、ベッドがあって、大きな窓もあり、素敵な部屋だなと思った。







今日からここで暮らすんだ。






窓を開け、新しい暮らしのはじまりに、大きく息を吸い込んだ。







2014.3.1




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