[5 わたしの両足]
生活に必要な服や、シンドリアでもらった宝物などを袋に詰める。
結構たくさんの量になってしまった。
でも、引越しということになるのだから別にいいか、とぎゅうぎゅうと押し込んだ。
みーちゃんなど、お世話になった人たちへの挨拶も済ませ、後はジュダルが迎えに来るのを待つのみとなった。
みーちゃんは「幸せになりなさいよっ!」と言ってくれたが、やはりさみしそうだった。
人との別れは辛い。
そして、長年過ごしてきた家を離れるのもなんだかやはりさみしい。
物がなくなり、からんとした部屋の中に1人ぼーっとしていると、ガチャリと音がしてジュダルが部屋に入ってきた。
ジュダルはノックを知らないのか、と前に聞いたことがあったが、そんなわけねーだろ。と言われたことがある。
「ただいま」
『おかえりなさい』
にっこり笑って答えると、ジュダルはぽんぽんと私の頭を撫でた。
ここはジュダルの家ではないのに、ジュダルは私の所に来るといつも「ただいま」というのだ。
私もつい、おかえりと答えてしまう。
「準備、もういいのか?」
『うん、ばっちりだよ!』
「そうか、なら行くか!」
そう言って私の手を引っ張るジュダルはどことなく嬉しそうだった。
その様子に私もつられてしまう。
別れは悲しいことだけれど、その分出会いもあるということ。
これから出会う煌帝国という国と、人達に少しばかりわくわくする。
「…っは!どんだけ苦手なんだよ!!」
私と、ジュダルと、私の荷物を乗せた絨毯はゆっくりと上昇し、風に乗って進み出した。
下を見たら負けだ、とぎゅっと目を瞑る私を見てジュダルは吹き出してケラケラと笑った。
『っ、ジュダルのばか!きらい!』
「はいはい、なまえ、」
ジュダルは相変わらず笑っていたが、後ろからぎゅっと抱きしめてくれた。
「怖くねーだろ?」
そう言って私の頭に顎を乗せたジュダルは、やっぱり嬉しそう。
回された腕と背中に感じる暖かさに、すごく安心感を覚えた。
これから始まる新しい場所での生活。
どんなことがあっても、ジュダルと一緒なら怖くない。
そう思った。
2014.2.27