4 ひとつだけ



創生の魔法使い、「マギ」だということ




煌帝国に住み、神官をしていること





その他もろもろと話をしている間、なまえは何回か驚きの表情を見せたが、最後までうんうんと聞いてくれた。





自分の話をするのは別に好きではないが、こんなにも真剣に聞いてくれるならいいものかなと思った。





もっとも、それは相手がなまえだからだろうが。









「悪いとこじゃねぇんだぜ。煌は。」






むしろ俺は好きだ。





食い物は美味えし、おもしろいやつも多い。





それになにより、戦争が強いんだ。



まあ、それはなまえには関係ないか。









煌には組織のやつらもいるが、俺がいる城ではなまえに指一本触れさせない自信はある。





リスクはあるが、ここに1人で置いておくよりかはましだ。





それに、煌には強くて信頼のできる奴らがいる。







『わたし、本当にジュダルのことなにも知らなかったんだね。』





また、困ったように笑うなまえ。





頭を撫でてやると、気持ち良さそうに目を細めた。




こいつを守るためならなんだってしてやる。






たとえ、こいつにとって少し辛い現実だとしても。






なまえに記憶が戻って、この街に帰ってきてからまだ1ヶ月も経っていない。





やっと取り戻した生活、また手放せと俺は言っているのか、と客観的に考えるときまりが悪い。






だけど俺はこいつを守るんだ。








『ジュダル。』




あぁ、でもなまえが辛いのは、俺も辛い。





「やっぱり、嫌だよな。」




『え?』




「せっかく戻ってきたのにな。」



『ジュダル…?』




「でも、俺は、俺は…





ずっとそばに居たいんだ!でなきゃ不安なんだよ、また、お前がいなくなったりしそうで!」




『っ、』




「もう、失いたく…ないんだよ。」




あー、言っちまった。


そう思ったときには遅かった。



なまえの両肩に置いた手が、その肩を強く掴んでしまっていたことに気がつき、手を引っ込める。





ああ、らしくねぇ。



なまえの顔が見れない。








『ジュダル!』




「っ、やめろ!」




『わっ、ごめん!』





なまえが急に俺の頬を両手で挟み、伏せていた顔を上げられたのでびっくりした。






『ジュダル、聞いて?』




「なんだ?」





頬を少し赤く染めたなまえ。



あ、かわいい。










『あのね、私は、』




目の前でもじもじとするなまえはやっぱりかわいくて、抱きしめたいという衝動に駆られるが、じっと次の言葉を待った。






『私、ジュダルと一緒に居られたらなんでもいいよ。だから、連れて行って?』





もうだめだ。


そう思ったときにはすでに、なまえを抱きしめていた。





2014.2.24



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