[3 いつでも]
『煌帝国…?』
なまえの大きな瞳がさらに大きく開かれた。
煌帝国という国を知らない人はいないだろう。
今や東の大帝国だ。
もちろんなまえも知っているはずだ。
しかし、なまえがハテナを浮かべているのはそこではない。
なぜ、煌帝国なのか、という点であろう。
「そうだ、煌。俺が住んでいる所だ。」
そう言うとなまえは、なるほど!といった具合にうんうんと頷いた。
なまえは俺がマギということも、煌帝国で神官をしているなんてことも知らないのだ。
なまえは俺のことをあまり聞いてこない。俺も別段、話したいとも思わないので話す機会がなかった。
でも俺はなまえのことは結構知っていると思う。
それは俺が聞いたから。
俺がなまえのことを知りたいと思ったから。
じゃあなまえは?
なまえは俺を知りたいと思わないのか。
俺に興味がないのか。
そう思うととても寂しくなった。
なんだよ。くそ。
『ジュダル!じゅーだーるーっ!』
「あ?」
いけない、ぼーっとしていた。
『最近ぼーっとしてること多いね。』
なまえはくすくすと笑った。
お前のせいだ、と言ってやりたい。
『そうか、ジュダルは煌帝国の人だったんだね。』
「ああ。」
『そういえば私、ジュダルのこと全然知らなかったんだ。ずっと一緒にいたのに。』
なまえの眉が八の字になる。
そんな顔も可愛い、なんて思ってしまう。
『絨毯で空なんて飛んじゃうしさ。』
うんうん、と一人でに納得するなまえ。
『だから、さ!』
ぱあっと明るくなった顔で見上げられる。
なまえはちびだから、上目遣いというやつだ。
さっきから、可愛い。
『ジュダルのこと、知りたいの。教えて?』
お願いするような仕草がたまらない。
「あぁ、いいぞ!!」
『煌帝国に行くかどうかは、それからね!!』
2014.2.18