[2 きみを守るために]
日が登りかけ、夜が明けようとしている頃、まだ少し暗い空を全速力で進んでいた。
なまえの住む街は煌帝国からは少し離れているけど、空を飛べばまあ、20分もあれば着く。
俺はマギだ。
マギだから強い。
だけどなまえはちがう。弱い。
すごく弱い。
だからまた、俺の前からいなくなってしまうかもしれない。
そう思うといても立ってもいられなくなり、さらに空を飛ぶスピードを上げると、風が冷たく頬に突き刺さるようで痛い。
だんだんと明るくなっていく空。
ひとつ、またひとつと明るさに消えていく星を見ると、きれいだ、とは思うがそれよりも少し悪い気になる。
この星たちのようになまえもまたいつか消えてしまうのでは、と。
二度と手放さない、と
絶対守ると、
そう誓ったものの、ずっと一緒に居られるわけではない。
焦る気持ちを抑えつつ、なまえの家に着く。
早く顔を見て、声を聞いて安心したい。
駄目なんだ、なまえがいなきゃ。
なまえ、なまえ。
ガチャとドアが開く音が響く部屋の中はがらんとしていた。
まだ寝ているのかと、ベッドを見るがそこになまえの姿はない。
まさか、いや、そんなことは、
悪い予感が脳裏をよぎる。
嫌だ。もう失うのは嫌だ。
『わっ、ジュダル!早いね!おはよう!』
幻聴かと思った。
その声に勢いよく振り向き、抱きつく。
急な俺の行動に、腕の中で暴れるなまえの耳は赤い。
よかった、なまえがいる。
「朝っぱらからどこ行ってたんだよ。」
少しきつめの口調になってしまう。
なまえは気にせずいつもの口調で答えた。
『鳥にエサをあげに行ってただけだよ。』
寝癖ついてるよ、なんて言いながら俺の髪を撫でるなまえ。
気持ちいい、なんて思いながらその温もりを感じた。
「なまえ、」
伝えなければいけないことがあるんだ。
ー"ジュダルが守ってくれるなら、どこにもいかないからね。"
なまえの言葉を思い出す。
きみを守るために。
『なにー?』
撫でられていた腕を握る。
そのまま指を絡め、ぎゅっと握る。
小さくて、細くて、弱い。
だけど、俺を包んでくれる大好きな手。
この手を、一生離さないために。
「なまえ、煌帝国に行こう。」
2014.2.18