10 なんでもできる僕になろう



煌帝国へ来て数日が経ったが、まだまだ慣れないことは多かった。







『うーーん…』






今、こうして悩んでいることもそのひつとつだ。




これは煌帝国だけでなく、シンドリアでもあった問題なのだが…







『迷った。』






ここのお城は広すぎる。







毎朝朝食を運んでくれる侍女さん達に悪いので後片付けくらい自分でしよう、と食堂へお皿などを返しに行ったまでは良かった。





慌てふためく侍女さんたちを見て食堂を出た後、まんまと道に迷ってしまったのだ。






助けを求めようにも侍女さん達は忙しそうだし、気軽に声を掛けられるほどの立場ではない。












「あら、なまえじゃない!」





『こ、紅玉様っ!!!』







不意に呼ばれた自分の名前に振り向くと、朝からきらきらと輝きを放っている紅玉様がこちらへと歩いていた。








『紅玉様、おはようございます。』




「おはようなまえ。丁度貴女のお部屋に行こうとしていたところよ〜。」





なぜ紅玉様が私に?と頭に?を浮かべていると、それに気付いた紅玉様は優しく微笑んだ。






「貴女とお話がしたかったの。」




『わ、私と?』




「そうよ!ねぇ、中庭に行きましょう?」






そう言うと、紅玉様は私の手を取り歩き出した。





女の子と手を繋ぐのは何年ぶりだろうか。






繋がれた、細くて白い綺麗な手を見ると、遠く離れた街に住む大好きな友達を思い出して、なんだか嬉しくなってしまった。

















『わ、綺麗…!』




「ふふ。でしょう?」






ここ、お気に入りなの。と笑う紅玉様はいつ見ても本当に可愛らしい方だと思う。







紅玉様が腰を下ろした横に、失礼します。と同じように腰を下ろした。




話とはなんだろうか。









「あのね、なまえ。貴女にお願い事があるのだけれど…」




『はい!私に出来ることならば、なんでも!!!』







お世話になっている、煌帝国の皇女である紅玉様のお願い事なんて、聞かないわけにはいかない。






しかしそれよりも、目の前の美しい皇女様が私を少しでも必要としてくれていることがとても嬉しかった。









「あ、あの…」




『はい!』






少しもじもじとする紅玉様は本当に可愛らしい。









「私と、お友達になってほしいの!」




『えっ!』







紅玉様の、まさかの発言に耳を疑ってしまった。







「い、嫌かしら…?」




『いえ!とんでもない!!』




「ほ、ほんとう!?」




『はい!私なんかでよければ!』






そう言って笑うと、紅玉様は安心したように顔を綻ばせた。








だが、私なんかが皇女様とお友達なんて、許されるのだろうか。






「よかったわあ。私、ずっとお友達がいなかったの…」





心の中で心配していると、ぽつりぽつりとそう仰った紅玉様。






「第八皇女で、お城でも誰にも必要とされてなくって…」





『そんなことないですよっ!』






悲しそうに呟く紅玉様に、つい大きな声を出してしまった。







『貴女はこの国の大事な大事なお姫様です!それに…』





目を見開いて私を見る紅玉様。





悲しい顔なんてしてほしくない。








『それに、貴女は、私の大切なお友達です!』




「なまえ…っ!!!」




『わっ』





私の言葉に、今にも泣きそうな顔で抱きついてきた紅玉様をしっかりと受け止めた。





2014.3.17


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