9 なにもできない君ならば





いつの間にか眠っていたようで、目を覚ますと外はオレンジ色に染まっていた。







いつもの見慣れた部屋、しかし、隣に眠る愛おしいぬくもりに頬が緩んだ。







「なまえ…」





規則正しい寝息を立て、すやすやと眠るなまえを引き寄せて腕の中に閉じ込める。






あたたかくて、心地がよい。








少し腕に力を込めてみてたがなまえは起きない。




よほど疲れたのか、ただ単に鈍感なのか。







細くて弱そうな腕、無防備な寝顔。







頬に手を添えてみる。




それでもなまえは起きない。








ここまでくると、どんだけ鈍感なのかと呆れてしまった。









ぎしり、と寝台が少し軋む音と共に、今度はなまえに被さるように上から見下ろした。








触れたい。



俺だけのものにしたい。











そう思うと、無意識に唇に手が触れていた。




ぷにぷにと柔らかい感触にくらくらする。





って、俺はなにをやってんだ。












『ん…ジュダル…?』





そこでようやく、なまえが目を覚ました。





なまえの頭が覚醒する前になまえの上から退き、隣に腰を下ろした。






『おはよう、ジュダル。』





体を起こし、結構寝ちゃってたねーと窓の外を見ながらつぶやくなまえの髪を整えるように撫でてやると、気持ち良さそうに目を細めた。








さっきは危なかった。




なにをしようとしてた?





あとちょっとで、俺は、こいつに。








『お腹空いたね〜』





なにも知らずにへらりと笑うなまえは無防備すぎる。






窓から差し込む夕日がなまえをきらきらと照らしていた。






2014.3.13



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