[5 ルフ]
『ありがとうございました!』
いつものように最後の客が帰ったのを確認すると、ジュダルはすっとなまえの前に現れる。
「なまえー!」
ぎゅっ…
『ジュダル、離れてくれないと片付けできないよ。』
あの事件の後、ジュダルは前より頻繁になまえの元を訪れるようになった。
そして、前に増してスキンシップが増えた気がする…まあいい。
「つれねーなー。…ん?なんだ?」
ジュダルの足元に、一匹のネコがいた。
しかし、そのネコはケガをしており、今にも倒れそう。
『ネコさん!大変!しっかり!』
ネコを膝の上に乗せて見ると、ケガの大きさがよくわかった。
お腹から血が出ていてとても助かりそうにない。
「なまえ、たぶんそいつもう…」
ジュダルはあまり興味がなさそうだが、少し悲しそうにこっちを見ている。
仕方ない。
『ジュダル、これから私がすること、絶対誰にも言わないでほしいの。』
「?ああ。」
ネコさんの苦しむのをもう見たくなかった。
誰がみてももうこの子は助からないだろう。
だけど、ちがう。
私には助けられる。
「はっ!?なんだこれ!ルフが!!」
ネコさんのからだに手を添えて目をつぶる。
手に光が集まってきて、あたたかさに包まれる。
ネコさんの傷は塞がった。
「なまえ…お前。」
ジュダルはやっぱりびっくりしていた。
だってありえないよねこんなの。
ネコさんは起き上がり、トコトコと歩いて行った。
『なんか、私のお腹の力を手に集めて触れると、傷が治るの。』
きもちわるいよね。
ジュダルはまだポカンとしている。
「いや、お前、すごいぜ!」
『え?』
てっきり嫌われるかと思っていたので、少し拍子抜けだ。
「でも確かに、このことは黙っていたほうがいいな。」
『きもちわるくないの?』
「は?なんでだよ。お前、あのネコ救ったんだぜ?すげーよ!」
そう言ってジュダルは頭をぽんぽんとしてくれた。
ジュダルに褒められた。
『うん!!』
この力はジュダルのために使おう。
そう誓った。
2014.1.11