23 私と私



一曲歌いあげると、大きな歓声と拍手に包まれた。






あたたかい。




この国は、この国の人は、この国の王は





ほんとうにほんとうにあたたかい。









シンドリアに来て半年ほど経った。





この国で、たくさんの暖かさを感じさせてもらった。








シンドバッドさんと目が合う。





そうするとまた、優しい微笑みが返ってくる。








シンドバッドさんに手を引かれるたびに





名前を呼ばれるたびに





頭を撫でられるたびに





抱きしめられるたびに










いつも心があたたかくなった。








それと同時に、"ずっとこのままで" と。











記憶を失う前の私がいるということはわかっている。




そして、それが本当の私だ。ということも。




黒い髪の男の子のことも。











「なまえ、素晴らしい歌だった。」









でも、ほら、またそうやって、










「この歌はお前が作ったのか?」










私の決心を鈍らせる。










ステージに登り、私の頭を撫でるシンドバッドさん。







心地よくて、あたたかくて。










ああ、本当に。










「なまえ…?どうしたんだ?」







頬を伝う涙に気がつく。








こんな、こんなことになるなら、








今の私も






前の私も






黒い髪の男の子への気持ちも





全て、全て















完全に失くなってしまえばいいのに。
















「っ…!?うっ!!」




「お、おい!どうしたヤムライハ!?」





「けっ、結界が…っ!破れるっ!」





「なにっ!?」







ヤムさんとシャルの声に、人々は一斉に空を見上げた。




2014.1.30

くらいまーっくす!!


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