[1 はじまりはじまり]
けして大きくはないが、人々に活気があり、商売が盛んである街があった。
きれいに整備させた川の近くにある小さな赤い屋根の果物屋に少女は住んでいた。
店には色とりどりの果物が並び、店の前には2、3人の客、そして、店の中では少女が赤いエプロンをつけ、笑顔で果物を売っている。
その光景を少し離れた家の屋根からじっと見つめる少年が1人。
少年はひとつあくびをし、すぐにまた果物屋に視線を向けた。
「早く終わんねーかな。」
日が傾き、夕日が街を綺麗なオレンジに包む頃、果物屋の少女ーなまえは接客をしつつ、閉店の準備をしていた。
『いつもありがとう!』
最後の客に商品である果物を渡し、笑顔向ける。
客が帰れば店の片付け。今日の仕事は終わりだ。
最後の客が去ると、どこからか1人の少年がなまえの前に現れた。
離れた家の屋根からじっとこの果物屋が見つめていた少年。
なまえはその少年に柔らかい笑みを浮かべ、口を開く。
『ジュダル!!』
瞬間、ジュダルはなまえの腕を引き、自らの腕の中に閉じ込めた。
数ヶ月ほど前、ジュダルはなまえの前に姿を現し、理由はわからないがそれからよくなまえに会いに来るようになった。
なので、この時間、この街でこの光景はめずらしくはない。
これからするのは、この2人のお話。