[16 宇宙と星と]
それから数日は部屋で休めとシンドバッドさんに言われ、ベッド生活が続いた。
ご飯も部屋に持ってきてもらいベッドで食べていた。
そのためか、体調ほほんとに良い。
ベッド生活の間、シンドバッドさんは毎日顔を出して、たくさんの冒険の話をしてくれた。
ヤムさんやジャーファルさんもたまに顔を出してくれたため、退屈することもなかった。
シンドバッドさんは私にたくさんの話をしてくれたが、私のことはけして聞いてはこなかった。
記憶のことを気にしてくれているのだろう。
「体調もだいぶ良くなったようで、よかったよ。」
今日もシンドバッドさんは部屋に来てくれた。
「頭痛とかはないか?」
『はい!あの、シンドバッドさん。』
「ん?どうした?」
ここ数日、ベッドでゆっくり考えたことをシンドバッドさんに話しておこうと思った。
王は私のことを家族だ、と言ってくれた。
でも、たぶん、ずっとここにいることはできないのだ。
まず、私はなんなのか。
実はまだ考えははまとまっていないのだけど。
『私、あの、考えたんですけど、』
「なまえ、」
私がこれから話すことがなにかわかったのか、シンドバッドさんの表情が少し強張り、言葉を遮るように名前を呼ばれた。
「焦らなくていい、ずっとここにいたらいい。」
まだなにも言っていないのになーと。
「まとまっていないのだろう?ゆっくりでいいんだ。」
『し、シンドバッドさんは心が読めるのですか。』
そうか、王にもなると心が読めるのかなるほど。
「ぷはっ!おもしろいな、なまえは!」
なぜか吹き出すシンドバッドさん。
そこに先ほどの真剣な表情はない。
「君は考えがすぐ顔に出る。」
シンドバッドさんは再びくすくすと笑う。
失礼な。
「ほら、頬が膨らんでいるぞ。」
そう言ってほっぺをつんつんとされた。
なんの話だっけ、あ、そうだ。
『もう、シンドバッドさん!』
「ああ、悪い悪い。」
まだくすくすと笑っている。
「なまえ、俺たちはお前を追い出したりなんかしない。さっきも言ったが、ずっとここにいればいい。記憶のことも、心配するな。俺がなんとかしてやる。」
なんの根拠もないことなのに、この人なら大丈夫という思えてしまう。
ほんとうにすごい人だ。
その瞳に見惚れてしまう。
胸がぎゅぅとなる。
そして、シンドバッドさんから初めて出た"記憶"という言葉。
『はい。』
この人に出会えてよかった、と何度思ったかわからないが、またそう思った。
2014.1.19