[15 大きさ]
「さぁ!着いたわよ!」
ヤムさんの後ろをついて歩くこと数分、大きな扉の前で止まる。
王がいるということは、ここはお城なわけで、少し歩いただけでとても広いということがわかった。
「ヤムライハです。なまえが目覚めたので連れてきました。」
コンコンとノックをした後、ヤムさんはそう言った。
その表情はさっきの笑顔ではなく、真剣だ。
「そうか、入れ。」
扉の向こうからの声に、ヤムさんはもう一度私に笑顔を向け、がちゃりと扉を開けた。
「なまえ、よく来たな。気分はどうだ?」
部屋にある大きな机にかけたシンドバッド王、その横に立っているジャーファルさん。
シンドバッドさんは王様だったんだなと今更ながら実感する。
『は、はい。体調はよいです。あの、王様…』
「そうか。なんだ…?」
シンドバッド王の優しい微笑みに、王の前にいるという緊張がだいぶ和らぐ。
さあ、しっかりとお礼を言わなければ。
『見ず知らずの私なんかを助けてくれて、ほんとうにありがとうございます…っ!!それと、先ほどは王にあのような態度を取ってしまい、申し訳ありませんでした!!』
深く頭を下げる。
ちゃんと言えたかな。こんなこと初めてすぎて、これであっているのか不安だ。
「なまえ、顔を上げなさい。」
顔を上げると、先ほどの優しい笑みのままのシンドバッド王。
そして、隣のジャーファルさんも同じ顔をしていた。
そこにはもう警戒の雰囲気もない。
「なまえ、堅苦しいことはなしだ。俺が助けたかったから助けただけだよ。」
シンドバッドさんの真っ直ぐな目に吸い込まれそうになる。
「そして、もう心配するな。俺たちは仲間だ。家族だ。遠慮もいらない。いつでも助けてやる。」
その言葉に胸の奥が熱くなる。
『は、はい…ありがとう、あ、りがとう…』
気づいたら泣いてしまっていた。
この人は、この国はこんなにも暖かいのか。
「な、泣かすつもりはなかったのだが…」
「シンが泣かしたのですよ。」
「ち、違うだろう!」
気づいたら横に立っていたヤムさんがぽんぽんと頭を撫でてくれる。
この世界にはこんなに心が大きい人たちがいるのだなと実感した。
それと同時に己の小ささも実感したが、今は置いておくことにした。
2014.1.19