かめんぶとうかい-6



「疲れた……」

「俺もだ」

あの後しばらく口喧嘩していたが、さすがに疲れたのかぐったりとバルコニーの手摺にもたれていた。

「お前折角めかしこんできたのに残念だな」

「何が? 」

手摺にもたれていたタバサが同じく手摺にもたれるコリンズの顔を見る。
「誰とも踊ってないだろ」

「まあ、そうだよ」

「だから俺とずっとけんかさせてるのも悪いな、と」

「いいよ別に、気にしないで」

憎まれ口が消えてしおらしいコリンズが珍しくていいよと言うタバサだったが、実はこの仮面舞踏会の空気に馴染めていなかったからと理由もあった。

きれいなドレスにも着られている感じがあったし。

踊りを楽しそうに楽しむ人達と自分が、どこか決定的に違うということも感じていたし。

だから逆に、コリンズが居てくれて良かったのかもしれない。

「私こそ……コリンズくんだって踊りたかったでしょう? なのに私が絡まれてたからこうなって」
「それは違う! 」

コリンズの大声はバルコニーに響いて、夜空に溶けた。

「……悪い、大声出して。ただ、それは違うって言いたい。仕方なくなんて思ってない。俺は」

「タバサ! 」

コリンズが顔を俯けて何かを言い掛けた途端、聞きなれた声が飛んできた。

「お母さん! 」

バルコニーの入り口に立つ赤いドレスのビアンカは元気に手を振ってきた。恐らく、バルコニーにはタバサとコリンズしかいないからだろう。

「ヘンリーさんが凄くきれいな景色見せてくれるって言ってたわ。一緒に来ましょうよ、もちろんコリンズくんも」

「えっ、本当? 行くいく! コリンズくんも行こうよ」

どこか残念そうな顔のコリンズくんの服の袖をつかんでタバサはぐいぐいとビアンカのほうに引っ張っていった。

「わかった、行く、行くから! 」





こうして舞踏会の夜ふけていく。

かめんぶとうかい




  

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