▼ かめんぶとうかい-5
なんとなく、わかる気がする。
今まで腹をたてた姿勢を崩すまいとしていたタバサだったが、ふとそう思ってしまうとついつい口元が緩む。
「何だよ、にやけて」
「なんだか似てるなって。それだけ」
怪訝な顔をしたコリンズに冗談めかして返答するタバサの顔には、もう苛立ちのかけらもなかった。
「不思議だよねえ、今までずーっと怒ってたはずなのに、本人に会ったら全部吹っ飛んじゃうんだ」
バルコニーの手摺に頬杖をついて少しの間しみじみと 「やはり嫌いにはなれない」 と思っていたが、次の瞬間ばっと頬杖をやめてぐるりとコリンズの方に向き直った。
「で、なんで私に舞踏会に来るななんて書いたの? 」
「書いた通りだ、お前には早すぎる」
「早くないわ! 遅いくらいよ! 大概の女の子は16歳くらいには参加してるんだから」
またタバサの怒りが再熱してきた。
早口で捲し立てるタバサに対してコリンズは余裕ありげに口角をあげた。
「俺は精神年齢の話をしてるんだよ」
「な・・・なな、なんですって」
いつもはこんなにコリンズに弄ばれることはないのに、なぜか今日は彼の掌で踊らされている気がしてならないタバサは、双子の兄まで引っ張り出した。
「レックスなんて私よりお子様なのに、どうして私だけ」
「レックスは精神年齢どうこう関係なくこういう席には参加するべきなんだよ、ゆくゆくは王になるんだから」
不毛な争いはその後も続いた。
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