18、君の言葉は造花に似ている。
月日が経つのは早いもので俺は18歳になり、家督を継ぎ織田家の当主となった。
それからと言うものいくつもの戦をし、勝鬨をあげてきた。なんともつまらない戦ばかりだったがな。
濃姫も銃の使い方を学び、めきめきと力を付けてきた。あと暫く経ったら一緒に戦に立てるやもしれないくらいに。
やはり濃姫はBASARA側の人間、しかも婆沙羅業も使えると言うことで一般の兵士よりも強くなっていった。銃の扱い方を教えたのが俺だからな、当然だ。


市も成長が早くあっという間に自分の考えを話すまでになった。子供の成長とは早いものだとしみじみと実感した。
市はくすぐったそうに笑うと金平糖を一つずつ摘んで食べた。
そして俺は隣に座っている市の頭を撫でながら目の前を見て口を開いた。


「して、お前が前田又左衞門利家か」

「はっ」


俺の目の前に居るのはあのBASARAでも有名な利家だ。
年は14、まだ幼さが残っているが凛々しい顔つきで中々のイケメンだ。体つきも良い、身長も大きいしな。しかしまだどこか子供っぽくソワソワしながら部屋をあっちこっち見ている。


俺は肘掛に肘を掛けて右手に顎を乗せながら利家をじっくりと上から下までみた。
今回の話は利家が織田家に付くという話だ。勿論断るわけがなく快くOKするつもりだ。前田は色々と織田に役に立つしな。
と、その事を利家に告げると、ほっとしたように胸をなでおろした。後ろに控えている前田家の家臣どももほっとした表情を見せた。
しかしどうも俺はこの空気が嫌いだ。こう、窮屈な空気は……。


「固っ苦しい」
ボソッと小さな声で呟けば隣に座っていた濃姫がすっと寄って煙管を取り出し、煙管に小粋を詰め火を付け俺に渡した。
俺はそれを受け取り口を付けて煙を吐き出した。部屋に独特の香りが立ち込める。前田家の家臣の表情が曇ったが気にしない。俺は吸いたいからすう。それだけだ。

ぽんぽんと吸い終わった小粋を煙管から取り出し、煙管をくるくると回す俺に利家はどうしたらいいか分からない様子で表情が固い。


「そんなに固くなるな。話は終わりだ、お前も好きにしてろ。」
そう一言利家に声を掛けるが勿論利家は何をするわけでもなくただそこにじっと座っていた。
市は部屋から出て行ってもらい、部屋には濃姫と俺、織田側の家臣と、利家、前田家の家臣だけになった。


俺の家臣は顔に感情を出すなと言っておいてるから俺の後ろでこんな時も涼しげな顔をしている。見た目だけな。
向こうの家臣は感情を表に出しすぎている。少しは隠せや、って言いたくなるな。


しかし、ふと見れば利家の瞳に良く知った感情が見て取れた。
俺の行動を食い入るように見て頬が少し桃色に染まる。この時代同姓の恋愛は可笑しなことではない。むしろその気の方が武将には多い。
今までこういうことは幾度と無くあった。だから俺は口の端を上げ、軽く微笑みながら利家に「犬」と一言言った。
勿論前田側の反応は何を今言ったのか分からないと言った様子だ。だが、俺は構わず「犬。こっちに来い」と手招きした。


家臣が怒りで顔を赤くさせていたが気にすることはない。ここは俺の城だ。好きにする。誰をどう呼ぼうが俺の勝手。そんなことばかり言っている俺はわがままか?
利家、否犬は、自分が呼ばれていると知ると恐る恐る俺の方に近づいて来る。
俺が、もっと近くに来いと言うと犬は俺の手の届く距離まで来た。それを確認してから俺は犬の襟元を掴み自分の方へと引き寄せ唇を合わせた。


ざわめくのは前田家の家臣どもだけで、俺の方は家臣、濃姫と大人しいものだ。
いきなりの事にびっくりした犬は目を見開いて俺を見ていた。
すぐに唇を離すと顔を真っ赤にさせて「はいっ、え…の、信長公!?」と動揺を隠し切れない様子で俺を見てきた。
俺は唇を下でべろりと舐めながら見下ろすように犬を見た。


「いや、可愛い顔をしていたからつい、な」
そう言うと、犬の顔がさらに赤くなっていった。そんな犬を見て俺はまた「可愛い」と声を洩らした。
何かを期待するような瞳をこちらに向けるが今度は無視して濃姫を引き寄せた。とたん、犬の瞳に嫉妬の色が見えた。
俺はそんな状況を見て良い犬が手に入った。そう一人微笑んだ。



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bkm


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