17、寄りかかった体温。
(市視点:3歳)

母様や父様はあそんでくれないからきらい。
けど、
鳥は好き、かわいいから。
花も好き、きれいだから。
濃姫様はやさしいからすき。
女中達もすき、お菓子をくれるから。

けれどね、一番すきなのは、だいすきなのはね、にいさま。
市はにいさまがだいすきなの。
にいさまは格好よくって、強くて、誰よりもやさしいの。
市のことを怒るときはすごく怖いけど、市のこと「きらい」って言った時は一度もない。

市はねにいさまみたいになりたいの!市のもくひょうはにいさまなの!
どうなったらにいさまみたいになれるかなって思って、今日はにいさまをかんさつすることにしました!
こんなことにいさまに言ったら、きっとやめろって言われると思うから、こっそりね!市はきょうはしのびになるの!

あ、しのびってねすごいんだよ!音もなくちかづいていっつも市をおどろかせるの!だけどね、にいさまが怒ってしのびを追い払ってくれるの!
けどね、けどね、市はしのびきらいじゃないよ?だって格好いいもん!あ、もちろんにいさまが一番格好いいよ?けど、しのびはまっくろの服きて、しゅりけんとかくないとか使ってすごいの!

「市、何一人でニヤニヤしてんだ」

うしろから声が聞こえてきたから振り返るとそこには市のだいすきなにいさまがほほえみながら立っていました。

「ないしょ!」

にいさまに市の計画がばれてはもともこうもありません!市は大人の人っぽく、つんとした態度で部屋から出ようとしましだが、きゅうに市の体は宙に浮きました。

「うぅ!?」

驚いて変な声をあげて慌てて口元を手で隠します。

「何が内緒だぁ市!」

そう言うとにいさまは市のにがてなこちょこちょをしてきました

「うひぃぃぃい!」

また出た変な悲鳴のあとに市はおもいっきり笑ってしまいました。
しばらくにいさまにこちょこちょされ続けて市はやっとおそろしいじごくから開放されました。市がこちょこちょ苦手だとしっててわざとしてくるのです!市だって怒っちゃうよ!

その後すぐに、にいさまは自室に戻りました。
今日は濃姫様も何かようじがあると言って自室にいるのでにいさま観察には今日はもってこいなの!

こっそりこっそりにいさまの部屋にいって壁に耳を当ててみると紙のこすれる音しか聞こえないです。
音だけ聞いてもつまらないのでちょっと隙間が空いていた障子から中のようすを見てみるとにいさまは本を読んでいました。

市は字が読めないのでなんて書いてあるのかわかりませんがすごくむずかしそう。本を読んでいるときのにいさまはすごく真剣な表情。
そうか!にいさまみたいになる為にはまず本を読むのね!さっそく本を読もうと思います!

次ににいさまが移動したと女中さんが言っていたので、本を無理やり読んでいた市は慌ててにいさまのところに向かいました。
にいさまは稽古場にいるらしく、外からこっそり見ました。
一人で外に出るのは危険だと言われていたので、女中さんを一人傍においてのかんさつです!

「姫様、少し宜しいですか?」

にいさまを観察している時に女中さんに話しかけられたので「なに?」と聞くと、女中さんはどうしてこんなことをしてるのかとぎこちない笑顔で言いました。
なので市は「市はにいさまみたいになりたいからにいさまを見るの!」と答えました。すると女中さんは今度はちゃんとした笑顔で「左様でございますか」と言ったので会話はそこで終了しました。

にいさまを見ると、にいさまは木の棒みたいなものを持って大勢の方をあいてにしてたたかっていました。
あのたくさんの人ではにいさまが怪我をしてしまうのではないかと市はしんぱいしましたがやっぱりにいさまは市のもくひょうのにいさまです!
たくさんの人を相手にしながらにいさまは一人、また一人と倒していきました。周りの人たちが白い服を着ているなか、にいさまは黒い服を着ていたのですごく目立ちます。けれど、それがすごく格好いいです!

木の棒がぶつかりそうになってもにいさまは表情を変えずによけていきます。そしてそのまま舞うように倒していくの!市は思わず見惚れました!
汗もかかないで、終わったあとにいさまは笑顔でした。そんなにいさまに市は顔が熱くなりました。
そしてまた分かったことは、強くなるということです!まだにいさまのように出来ないので木の棒を拾って木にを相手に特訓するも、すぐに息がきれてその場に座り込みました。

やっぱりにいさまみたいになるのにはたくさんの努力が必要だと思いました。
とりあえず体力をつけておこうと思ったのですぐ背にある木を上ることにしました。
女中さんは止めてって言ったけど、市はにいさまみたいになりたかったから頑張りました。けど、どう頑張っても木に上れません。
市は悲しくなりました。女中さんは「信長様は生まれながらに才能をお持ちになっていたお方でした、姫様は姫様でよいのですよ」と言いましたが、市は納得がいきません。市はにいさまの妹のはず、だけど、にいさまと市はとても違いすぎて……。

「はぁ」

「何溜め息ついてんだ市。」

本日二回目です。後ろをふりむくとにいさまでした。
もう!なんで市がなやんでいるときににいさまは来るのかな!

「何唇尖がらせてんだよ」

そう言ってにいさまは笑いながら私の隣に座ってきました。にいさまの黒い綺麗な髪が市に触れてすこしくすぐったい。
にいさまが何も言わないで空を見上げているので市も空を見上げました。
空は青くすんでいてすごく綺麗でした。市の好きなものの内に空も入れておこうかな、なんて考えました。
風が吹くと色んな匂いがしてきました。土と草と、それとにいさまの匂いも。
不意ににいさまが「市、今日の俺はどうだった?」と聞いてにやりと笑いました。どうやら今日の市の計画はにいさまにはまるわかりだったようで、市は悔しくて頬をふくらませました。
すると、にさまはまた楽しそうに笑いながら市の頬を突付きました。

「にいさまは格好よすぎます!市はにいさまみたいになるのはむりでした!」

ぷんぷんと怒りながら言うとにいさまは、市の頭を撫でながら

「俺はそのままの市が好きだぜ?」

と言ったので、市はもう少し市のままで居ようと思いました。
それでも市のもくひょうはにいさまです!



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