15、口無の花。
それは空が厚い雲に覆われて、薄暗い天気の日だった。
産声をあげて市は生まれた。俺はその産声を隣の部屋で聞いていた。
女中が部屋に入ってきて「信長様!妹君が生まれました!!」と言ってきた。
俺は「ああ」と言って軽く返事をした。隣で座っている濃が「信長様おめでとうございます」と言って微笑んでいる。

市が生まれた。俺はただその事だけに喜んだ。
さて、市はどういう性格なのか。いや、俺が市をどう変えていこうか?
父上母上なんか好きにならなくてもいい、俺だけを見て好きといえばいい。俺に全てを委ね微笑んでいればいい。
だが、BASARAのような性格にもしたい。市には自虐的な少女に育ってもらわなければ・・・・。
愛しては怖がらせ愛を教えては恐怖を覚えさせ。ああ、楽しそうだ。

にやりと歯が見えるほどに微笑んだ俺の表情を見て女中は恐怖に顔を引き攣らせた。
だが、隣に座っている濃姫はうっとりとした表情を浮かべ俺を見ていた。
濃姫はもう完全に俺のものになってしまった。俺が言えば濃姫はどんなことだってやってのけるだろう。

実際濃姫は変わった。俺は出来るだけ戦国BASARAの世界に近づけたかった為まず濃姫の服装を変えさせた。
濃姫が選んだという黒と赤を基調とした着物は俺の着物と何処か似ている。
それと人を殺す方法を教えた。濃姫は最初は顔を強張らせていたが武器を扱うのはすんなりやってのけた。
こっちの世界の特定された人物は運動神経等が他の人よりも高い。濃姫もその一人、俺もその一人だ。

勿論濃姫には銃を持たせた。ガトリングはまだ早いな。
女中や乳母達は濃姫が銃を扱う事に反対してるが濃姫は何かに取り付かれたように銃を手放さなかった。

「これで信長様が兄上になられたのですね。妹・・・きっと信長様に似て美しい顔立ちの妹様でしょうね」

「そうだな」

そう言って俺は濃姫を引き寄せ腰の辺りを撫でた。
ここのところ濃姫は体つきが良くなった。女に近づいてきている証拠か。
まぁ、現在16の俺は今成長する時期なのか俺も成長で身長の伸びが著しい。もうすぐ丈六尺(約180p)と言ったところか??


俺は正直母上に会いたくないが市を見に行くために母と市の居る部屋へと向かった。
母上は俺を見て嫌そうな顔をしていたが俺は無視して市に近づいた。
小さい小さい市。今は安らかな顔をして寝ているがその内嫌でもそうは出来なくなっていくからな。
そう心の中で呟いては俺は再びにやりと笑った。

隣に居る父が俺をつまらなそうに見て俺の横から市を抱きかかえた。
俺は市を俺の前から奪われ怒りの矛先となった父上を睨み上げた。だが、父はそんな俺を無視して市を見る。
その時、市が小さくも大きな声で泣いた。父上はおろおろと情けなくも乳母に市を預けようとしていた。
そんな父上に「父上、貸して下さい」と言うと俺は市を抱きかかえた。

「Don't cry Baby.」

そう言って軽く揺らすように市をあやすと市は次第に泣き止み俺に笑顔を見せた。

「いい子だ」

そう言って俺は額に唇を寄せた。
本当は唇にしたかったのだが、赤子のうちから唇にkissをすると口に菌が入り虫歯になりやすいと話で聞いたような気がする。
市には虫歯になって欲しくないので我慢だ。
がくっと、肩を軽くおろして俺はまた母上の横に市を戻した。

その様子を見ていた濃姫や女中達を横目に俺は部屋を出て行った。
後ろから濃姫が着いてくるのが分かる。

「可愛らしかったですね」

「俺の妹だからな」

俺は薄暗い空を見上げながら素っ気無く答えた。
濃姫は後ろで「ほぅ」と息を付いた。
後ろの濃姫を見れば頬を染め何処か遠いところを見つめていた。

「何考えてんだ」

そう言えば濃姫はさらに頬を赤らめ「い、いいえ何も考えてませんわ!」と言って顔を俺から逸らした。

「なんだよ、お前も子が欲しいってか?」そう言った途端濃姫は両手で顔を隠した。
図星だったらしいな。
俺はそんな濃姫の手を顔からはがして言った。

「なぁに、その内嫌でも生ませてやるよ」

お前と、俺の子をな。




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bkm


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