11、造花に恋せよ。
俺は小さく溜息をついた。何故って??決まってんだろ。この間来た姫さんのことについてだよ。
遊びに誘っても来ねぇし、贈り物をしても素っ気無い返事ばかりだ。

あ゛ぁーーー!!なんなんだよ!!最初っから飛ばし過ぎたのがいけなかったのか??あれか、kissがいけなかったのか???
なんだかもう、何をしたらいいかわかんねぇんだよ。
一つに結んでいた髪をおろすとその髪をぐしゃぐしゃと掻き乱した。

「チッ」と舌打ちをしてから俺は部屋を出た。驚いた様子の小姓が「信長様どちらへ!?」と聞いてきたので
「其処までだ!!」と曖昧な返事を返し外に出ると愛馬の元へ行った。
愛馬に跨り手綱を手にして町まで駆けて行った。運動すると心がスッキリする。
風に髪を乱しながら駆けると賑やかな城下町に着いた。小さい頃はよく来ていたが最近はごちゃごちゃと色んなことがありすぎて忙しかったせいで行くことができなかった。

そのせいでストレスが溜まっていたというのもある。
大体何かに縛られるっつうのが嫌いなんだよ。濃姫ももっと明るかったら俺もやりがいがあるんだがなぁ・・・・。
さぁて、これからどうするものか。

そんな事を考えながら町中で馬を歩かせていると後ろから「信長様」という声が聞こえてきた。
見れば結構付き合いの長い女どもが俺の方へ駆け寄ってきた。

「なんだ、俺に用があるのか?」

馬に乗りながら答えると。女どもはきゃいきゃいはしゃぐ様に近づき手にしていた花を俺に渡した。

で、これが何だって言うんだ??
俺がまだ女だった頃は花を見て「わぁ、綺麗!!」なんて目を輝かしていただろうが今は男。
花なんて興味ない。食えないし、枯れるし。
だが、俺はそんな表情見せるとこなく女に「Thanks」と言ってその頬に手を当て唇を寄せた。
そのとたん頬にkissされた女は顔をより赤らめその場にしゃがみ込んでしまった。
残りの奴にもそうしてやると同じように倒れこみそこ一体女達で溢れかえった。

全員にkissし終わり、しばらく女無しだった生活に自分が満足していなかったことに気づいた。
別にもう濃姫なんてどうでもいいか??この際もう・・・・。いやしかし・・・。

なんて考えが自分の中で駆け巡った。バサラの濃姫にならないんだったら俺は興味ないし
ただの女に成り下がっただけだ。それに俺はつまらない事は嫌いなんだ。
たった一人の女に尽くすって言うのはあれだ。今までは濃姫のためを思って作らなかったが、側室も作って良いんだったな。帰ったら側室の話でもしてみるか。

最後に一度だけ濃姫に会うか。この花を持って・・・・。

そして俺は少し町の空気を吸っただけで城に戻った。
そして濃姫のところへ向かった。手に花を持って。
濃姫の部屋には濃姫と、乳母と女中が居た。二人は俺達に気をつかってか部屋を出ていって俺達は二人きりになった。
そういやぁ最初のときも二人っきりだったな。

濃姫は少しおどおどとした様子で「何でございましょう信長様」と聞いてきた。

「なんだ、用が無けりゃ来ちゃいけねぇのか??」

そう言えば濃姫は「い、いいえ」と言って顔を俯かせた。
初々しいのはいいことだが俺に興味が無いというところが気になるところだ。
俺に少しでも気がありゃあ、口説き落とせるんだがこいつはなかなかそうはいかねぇ。

黙ったままの俺達。沈黙が続き俺は単刀直入に聞いた。

「なぁ、濃は何故そこまで俺を避けるんだ?」

くるりと濃姫に振り向く形でそう聞いた。その瞬間濃姫の肩はびくりと上がる。
そして口を固く結んだ。
挙動不審に辺りを見回す。

「俺が許す。言え」

そう言っても濃姫の口は固く結んでいた。
そんな濃姫にだんだん苛付き始め少々乱暴な口調で「命令だ言え」と言った。

すると肩を震わせて、涙目になりながら濃姫は弱々しい声で言った。

「私は貴方様が怖いのです。」

言った瞬間に溢れ出した涙を堪えきることが出来ず濃姫は両手で顔を覆った。

ああ、これは駄目だ。

俺は思った。
俺に恐怖を持ってしまったか。
恐怖を感じると人はそれから中々抜け出せない。一度感じた恐怖は消えることは難しい。
濃姫には好きになる、ならないの前に恐怖を感じてしまったせいで駄目だった。

ならばこれは仕方がない。

俺は泣く濃姫を上から見下ろした。
とんだ期待はずれだったようだ。そう言う様な瞳で見た。

これで濃姫を泣かせたのは二回目だ。
だがもう泣かすことは無いだろう。なぜならもう濃姫に会うことは無いからな。

俺は部屋を出た。
すぐに乳母達が来て濃姫を慰めるだろう。
俺のことを何か言うだろう。だが、構わない。言いたければ言えばいい。
俺はその言葉に反応しないだけだ。


渡し忘れた花は部屋に置いたままで。




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bkm


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