77、ハロー伊達政宗。
朝日が差し込み朝露に濡れた草花がキラキラとその姿を煌かせ、朝の訪れを告げる。
そんな一日の始まりの風景に一人自室で口の端を上げ何かを企てようとしているような笑みを浮かべた青年と思わしい人物が居た。

「今日こそはぜってぇ負けねぇからな小十郎」

そう呟けば見た目は青年だが中身は女。女だというにの男として育てられたという変わった育てられ方をした伊達家頭首の政宗が立ち上がり眩しいばかりの朝日を見た。
中性的で美しい容姿、茶色の髪、鳶色の瞳、青い着流し、身長は165と男と見られるには少々小さめの背丈。だが体つきは細いその体には筋肉がついており、力は男に引けを取らずかなり力が強い。なんせ片手に刀を3本持って戦をするほどだ。
並みの人が政宗の戦っても無傷では済まされないだろう。
そんな彼女は今まで女だとばれた時は一度も無い。ばれないように心を偽り、体を作り上げ今までやってのけた。もうちょっとやそっとのことでは動じないだろう。


政宗は楽しそうに笑いながら唇をぺろり、と舐めると気配無くその部屋を出て行った。


政宗が居なくなってから暫く経つとその部屋の障子に一つの影が浮かび上がる。
その影、小十郎が部屋に「政宗様、朝餉の準備が整いました」と声をかけるも、勿論中から声が聞こえるはずも無く
がらり、と中に入った小十郎はものけの殻となった部屋を見て額に青筋を立て「政宗様ぁぁぁぁあああ!」と怒った小十郎の怒号が城中に響いた。


これが伊達家のいつもの朝。



――――――


数刻後、城に頭にたんこぶを作らせた政宗と小十郎が帰ってきた。
政宗は痛む頭を撫でながらの帰省だ。


「政宗様!また貴方は脱走なんて!それも朝餉も食べぬうちからとはどう言う事ですか!」
「oh〜小十郎、だってよ朝餉食ってたらお前ずっと俺についてるじゃねぇか」
「当然です!全く貴方という人は、もっと伊達家頭首としての自覚を…」
「okey分かった、分かったから!小十郎」
「何が分かったのですか!!」

小十郎に正座をさせられしゅんと肩を縮こませ政宗は小十郎の説教を食らっていた。


なんだよ小十郎の奴!今回は絶対捕まんないって思ってたのに!!もしかして私に発信機取り付けてない!?
前の時だって簡単に見つかったし、前々回だってしっかり隠れてたのに……今回だって気配まで消したって言うのになんなんだ!化け物だこいつは!!


「政宗様何余計な考え事なんてしているのですか?」
と悪魔のような笑みを浮かべる小十郎に私は「ははっ」と乾いた笑みを浮かべ「sorry」と小さく言った。


心を完全に回復させ、もう笑って冗談も言えるようになった私は元気にすくすくと育ち育ち育ちに育って今に至る。
もうテンションも前のテンションに戻ったのは良いことだが、何より毎日が楽しい。
まぁ仕事とかは面倒だからこうして逃げてるけどね。


最後何か吹っ切れたように前向きに考えるようになってから早4年の月日がたった。人間変われるときは変われるものだと思った。
私は今までの分を取り戻すように食べ動き笑い遊んだ。その結果がこれだ。立派な私の知っているバサラの政宗になりました!

無事婆娑羅技も出せるようになった私は戦もバリバリ参加して、伊達の為に頑張ってます。
そりゃ最初こそは人を殺すということは怖くて仕方が無かった。人が死ぬのは嫌だ、凄く嫌だ、だが生きていく為に私は人を殺した。
決して慣れることは無いだろうけど、私は慣れたと言って刀を振るうことにする。それが今の最善の答えだと思って。


そんな事を考えていると長い長い小十郎の説教も終わり、足が痺れて動けない私はその場に横になった。
小十郎はせっせと書類を運んでくるし、暫く足が痺れたフリでもしておこう……。


「政宗様、もう治っておりますでしょう?」

「はい……」


やっぱり小十郎にはばれてた!
私は泣きべそをかきながら筆をとった。じっとしていると体が疼く様なそんな感じが気持ち悪くてもぞもぞ動いていると小十郎に「厠ですか?」と聞かれた。違ぇよ!!

腹いせに小十郎の広いデコをべしっと叩けば小十郎は私の手首をとり「何ですかなこの左手は」と言ってあの黒い笑みを私に向ける。
違うんだ!!出来心なんだ!!小十郎!!


ふるふる、と首を横に振れば小十郎に両手で頭を固定され、ごちん、といい音を立てて小十郎に頭突きされた。痛い……。
ただ頭突きされる時、小十郎の顔が迫ってくるのにドキドキしたのは内緒だ。





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bkm

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