55、その一言はとても重過ぎると思う。
本を開いて小十郎と喜多とお茶を飲んでいると「兄上!!」と元気な声が聞こえて気た。
あ、この声はと笑顔で後ろを振り向けば庭から弟の小次郎が出てきた。

「よく来たな小次郎」

「はい、兄上に会いたくなって来てしまいました!」

部屋に入る小次郎。
小次郎はあの日から時々顔を見せるようになった。
義姫のこともあるでの中々出てこれない筈なのに、小次郎はその点すごいと思う。
義姫の目を掻い潜りここまでこれるんだから。だが、危険なことだ。
もしばれてしまったら私だけではなく小次郎も危険な目にあってしまう。

「小次郎、危ないからあんまりここには来るなと言っているだろう?」

「・・・はい。」

しょんぼりと、肩を落とす小次郎。しかし、こればっかりは譲れないのだ。
小次郎を甘やかしてはいけない。小次郎自身の為にも、私が心を鬼にしなければならないのだ。

「いいか、あとは暫くここに来るなよ」

「・・・はい・・。」

そう言った小次郎の頭を撫でて「いい子だ」と言ってやれば小次郎は嬉しそうに笑った。

すっと、小次郎と私の前にお茶とお茶菓子が出された。
小次郎が「ありがとう」と言って喜多に礼を言う。喜多は「いいえ。」と言って後ろに下がった。

小十郎と喜多の二人は、小次郎が敵意を持っていないというのを知ってもやっぱり小次郎のことを良いとは思っていないみたい。
いつ寝返るか分からないし、そこまで信用できるわけではない。
それに、やはり、小次郎が私と敵対していると言うからだ。

まぁ、しかたが無いことだ私は小十郎たちが小次郎にもう来るな、と言われても止めはしないし、小次郎にきつい態度をとってもよっぽどのことではない限りとめないつもりだ。

小次郎にはどれだけの危険と自分の立場を知ってほしいのだ。
周りはいつも危険でいっぱい、味方だけではないと言うのを知ってほしいからだ。

小次郎はいつも少し話をしてすぐに帰る。
義姫のことがあるからだ。長居は出来ないと言うのを自分なりに分かっているらしい。

今日は「いい天気ですね」「お体は大丈夫ですか?」「良い事はありましたか?」「自分はこうです」と
小さい子が頑張って大人のような会話をしようとしてるのが可愛らしかった。
自然と緩む頬を止めようとはせずそのままの表情で小次郎の話を聞いている私に小次郎は嬉しそうに話をする。

私は「そうか、そうか」や「それは凄いな」等という相槌を打ちながら話を聞く。
私達が話をするときは二人は話しに混ざらない。なぜだかそう二人の間で決まっているようだ。

そして、暫く経って小次郎は帰っていった。
同じく庭に出て、ちらちらとこちらの様子を見ながら後ろめたそうに帰る小次郎。
その小次郎に私は小さく手を振る。すると小次郎も、手を振って姿を消すのだ。

小次郎の姿が無くなってから小十郎と喜多ははぁと息を吐いた。
どうもあの空気は耐えられないらしい。息が詰まるそうだ。

今日は喜多の生け花と小十郎の体術の方があったのだが、二人は話をして小十郎の方を優先したみたいだ。
暫く私は小十郎に人体の急所と、的確に相手の動きを止める方法を教えてもらい、その後相手につかまれた場合の対応などを教えてもらった。
まだ上手くいかないけど、これからも練習を続けて上手くしていくつもりだ。
自分の身くらいは自分で守れるように。

元々動くのは好きだったので体を動かし汗をかくと気持ちがいいと感じる。
小十郎に教えてもらいそれなりに楽しくやっているつもりだ。

それも終われば私と小十郎と喜多で少し近くまで散歩に行って三人で歩きながら色々な物を見た。
植物や建物、田畑。
そのどれもがとても新鮮で私は全てを覚えるように見た。
とても楽しそうに私に話す小十郎と喜多を見ればこっちまで楽しくなってきてしまう。
私は握っている二人の手をぎっと握り締め今この大切な瞬間を逃さないようにした。

そんな事をしてすごした今日なのだが、父上からこんな話が出た。

「少し小十郎と離れ喜多と四国の方に行かないか?」と

「はぁ・・・・???」




四国・・・・!?






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