45、私の知らない存在のようで。
(喜多視点)


梵天丸様の命により小十郎を呼びに行った。
小十郎は自室で目を閉じて待っていた。私が来るのを感じ取ってか瞼をゆっくりと開いて私を見た。

「梵天丸様がお呼びです」

「はい・・・。」

そう言って小十郎は笑みを溢した。屈託の無い笑顔だ。
小十郎は立ち上がると早歩きで梵天丸様の居られる部屋に向かう
そんな小十郎を私は挽き止めたすると「なんですか義姉上」と早くしてくれと小十郎の声が急かす。

「私は輝宗様と話をしてから行きますと梵天丸様に伝えておいてください」

そう言うと小十郎は「分かりました」と言ってすぐさまに歩いて行ってしまった。
私は、はぁと小さい溜息を漏らした。

「本当、梵天丸様に首っ丈なのね」

一人そう呟き苦笑いすると私もすぐさまに輝宗様の部屋へと向かった。
部屋に向かう途中にも私は動揺でかこけそうになったりもした。こんなだらしの無いところ誰にも見せられない。
部屋の前に着くと「失礼します」と一声かけた。

「おう」

短い返事を返され私は部屋に入った。
中では輝宗様は戦の布陣を考えていいる途中だった。

「すみませんお忙しい中」

「いや、構わねぇよ」

そう言って輝宗様は笑顔を私に見せ体を私のほうに向けた。話をする体制だ。

「で、どうした喜多」

「はい・・・それが」

と、まで言って私は口を紡いでしまった。輝宗様がどうしのだろうと私を見ている。
どうやら私の中でさっきのことが思った以上に衝撃的だったらしい。
あんな幼い子が、すでに本当の自分を知っていた。誰にも教わらず自分で。どうして??何故??

「輝宗様・・・・梵天丸様は、自分が女子だというのを知っていました・・。」

瞬きをせず輝宗様を見つめていった。
私の言葉を聞いた輝宗様は、最初なんの話しだか分からないという顔をいらしていたがだんだんと私が言った事が分かったらしく眼を丸めて私を見た。

「はぁ????」

思わず輝宗様の口から出たのはそんな言葉だった。

「梵天丸様は知っていました・・・。」

私はもう一度同じ事を繰り返し輝宗様に言った。
さらに驚いた顔をした輝宗様。

「梵天丸は知っていただと!?誰に教えてもらったんだ!!」

やはり、輝宗様もそこが気になったらしい。

「いいえ、誰にも教わっていません。自分で分かったとの事。」

輝宗様は体が強張っていたのか、体の緊張を解す様に深い息を吐いた。
輝宗様の視線は畳を見てた。私はなんと言っていいかわからず、どんな行動を取ったほうがいいか分からずただぼおっとしていた。
暫く経って輝宗様が徐に口を開いた。

「梵天丸はどこまで知っているんだろうな」

「どこまで?」

「梵天丸自身の事とその他の知識だ」

「・・・どこまで知っているのでしょうね。私には分かりません。」

「そうだな、俺にもわからねぇ・・・。」

そして私達はまた深い溜息をついた。

「驚きました。正直、梵天丸様が女子だと知りまず自分を受け入れるところからはじめようと思いましたのに・・。」

「俺もだ。梵天丸をまた悲しませてしまうのかと思った。」

「なんだか、拍子抜けてしまいました」

「そうだな」

「梵天丸様には色々と驚かされます。こんなに驚いたのは久し振りです。」

「そうだな、思わず頭の中が真っ白になった」

そう言いながら輝宗様は煙管をとりだして吸い始めた。
部屋があっという間に煙草の煙と香りに包まれる。

「それでは私はまた梵天丸様のところへ戻らせていただきます」

「ああ、報告ありがとな」

「いいえ、もったいなきお言葉を」

輝宗様の部屋に出てからも私は暫く頭がうまく働かなかった。
このままではいけない。と頬を叩いてなんとかいつも通りの自分に戻ろうとした。
さぁ、部屋に戻ろう。梵天丸様に次なる教育のため。

梵天丸様の部屋に戻ると小十郎と梵天丸様仲良く本を読んでおられた。
二人私に気が付くと笑顔で迎えてくれた。
梵天丸様の顔には同様や緊張など一つも顔に表れてはいなかった。
一体梵天丸様はいつから自分が女子だという事に気付いておられたのでしょうか。
変わらない態度の梵天丸様をみて私は梵天丸様は何故だか自分達とは違う人間に思えた。
梵天丸様は何か特別な存在。しかし、どういった特別なのかは自分で考えておきながら分からない。
しかし、きっと梵天丸様は私たちとは違う。上の存在。なのだ。

私は今日梵天丸様の存在を改めて感じた。



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bkm

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