28、気付いてたんだったら言ってよ!!
私は部屋の隅で本を読み、小十郎は私から少し離れたところで本を読んでいる。
私の部屋に居る時の小十郎はこんな感じだ。
正直こうしているととても心が落ち着く。私の部屋に小十郎が居るもの違和感を感じなくなってどれほどだろう・・・。

部屋には本の頁をめくる音だけが聞こえる。
たまに小十郎が私に話しかけてくること以外に私は何も発さない。


この空間が好き。
この沈黙が好き。


私は落ち着いてこの部屋に居る事が出来た。

だけど、やっぱり私は小十郎にきつく当たってしまう。
私はどうしたらいいのか、人との接し方がわからなくなっていた。


「梵天丸様外へ散歩に行きませぬか?
部屋に篭ってばかりでは体に良くありませんよ」


「別に良い」


会話だってこんな感じ。
短いにも程がある。


小十郎に触れようと思っても体が動かない。触れようと手を伸ばせばすぐに私の手は引っ込んでしまう。

怖いのかな?怖いんだよね。

私はそうやって自分に言った。
焦らなくて良い。焦らなくて。


だけど。そうは言っても、もう何ヶ月小十郎と居るんだろう?
小十郎にちゃんと接してあげようと決めた日から何日経ったのだろう?


小十郎だってこんな態度の私となんかもう嫌だなとか思ってるんじゃないかな?


小十郎にだけは嫌われたくない。
あんな態度をとっておいて言える事じゃないと思ってるけど私は小十郎に嫌われたくない。


私は本から少し目を離して小十郎を見た。
小十郎の本を読んでいる真剣な顔が私の瞳に映った。

本で難しいところなのか眉間に皺がよっている。
私は気付かれないのをいい事に、小十郎の顔を見ていた。


綺麗な顔立ちの小十郎。そんな小十郎を今独り占めできていると思うと嬉しくなった。


その時いきなり小十郎が私のほうに顔を向けた。
いきなりの事で私は小十郎を見たまま固まったが、慌てて本に視線を戻した。


小十郎は何も言わずにまた小十郎も本に視線を戻した。

心臓の動機が早くなって激しく波打つ。


絶対見ていたの小十郎に気付かれたよね!?私はいつまでも小十郎の顔を見ていたことを後悔した。
しかし、後悔はしてもまた時間が経てば小十郎が気になる・・・。


私はまたチラリと小十郎を横目で見た。
先ほどの表情とは違って笑みを浮かべていた。
本で楽しいところなのかな?なんて考えた。


今度は本と小十郎を交互に見る。
これだったら大丈夫かな?


私は小十郎が気になって、本など後半から全然頭に入っていない。


そして、数回本と小十郎と交互に見てまた本から小十郎に視線を変える時に、また小十郎と目が合ってしまった


私は視線だけ動かしていたので今度は慌てて素早く視線を本に戻すと何食わぬ顔をしながら本を読んだ。


私は再び後悔の渦に襲われ、変な汗が流れた。
見ればまた小十郎と目が合うかもしれない。
だけど、小十郎がどうしても気になる。どうしてなんだろう、気にしないようにすればするほど気になってしまう。


怖いもの見たさっていうか、なんていうか・・。


あと一回だけ!私はそう自分に言い聞かせてもう一度だけ小十郎を見ることにした。

恐る恐る小十郎のほうに視線を移す。
少し見たらすぐに本に視線を戻そう。そう思って視線を小十郎へ・・・・・。


「!?」


私が小十郎へ視線をやると小十郎はすでに本から目を離して私を見ていた。

驚いて肩がびくっと震えた。


小十郎は私に優しい笑みを向けていた。


今まで小十郎を見ていたこととか、ばっちり小十郎と目が合った恥ずかしさで私は顔が赤くなるのがわかった。



小十郎の目が細くなり私を見る顔がより一層優しいものへと変わる。
私はもう恥ずかしくて恥ずかしくて小十郎に背を向けた。

私の後ろは壁だったので壁に頭を押し付けて恥ずかしくてどうにかなりそうな
この感情を押しとどめるのに必死だった。


背中から感じる小十郎の視線。
ああ、小十郎もこんな視線をうけてたのかな?これじゃあ見ていたってばれるよね?小十郎は一体いつから気付いてたんだろう。

穴があったら入りたい。私は初めてこのことわざを使ったかもしれない。
あと、顔から火がでる。このことわざも使うなんて・・・。
一度に二つのことわざを私は知った。


恥ずかしさに耐えていると頭にぱふっと小十郎の手が置かれた。
そしてぎこちなく私の頭を撫でる。


小十郎に頭を触られないように壁の方に頭をこすり付けると、うなじに近い部分の髪をすっと撫でられた。


くすぐったいが逃げられない。
私は体を動かして必死に逃げた。



そして小十郎をきっと睨んだ。

しかし小十郎は悪びれた様子もなく愛おしそうに私を見るのだ。


「止めろ!!」

と言って小十郎の手を自分の両腕でガードすればようやく小十郎の手は引っ込んだ。


私は小十郎にまた背を向けた。そしてそのままの体制で小十郎に言った。


「いつから気付いてた」


「初めからです」


そう言う小十郎の声は楽しそうだった。


初めからだったらもうすぐに私のほうに顔を向けてくれればよかったのに!!

そうとは言えず、私は小十郎の視線を感じたまま本を読み始めた。





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bkm

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