27、驚いた視線の笑顔。
父上が私の部屋に来た日から5日ほど経った。
私の傷も少しずつ癒えてきて痛みも消えてきて一安心。
膿んだりしなくて良かった。
なんて考えた。


私は傷のせいもあって暫く熱が出ていた。
布団に横になり小十郎に濡れた布を頭に乗せられる。
私はそんな小十郎の様子を見ていた。
別に小十郎を見る理由なんて無い。ただなんとなく。


5日前、私は父上の心の中を知った。
父上はあんな風に考えていたのに私は全然わからなかった。


父上の心の中はわかったが小十郎はどうだ?
小十郎の心の中はよくわからない。小十郎にとって私はどんな存在なのか
小十郎が私に構えばなにか利益でもあるのか?だから居るのか。
それとも、また別な理由なのか。



小十郎だから悪いことは考えていないと信じていたい。
いや、ありえない。


じゃあ何でなんだろう。
小十郎はそこまでして私を守る理由なんて無い。



あ!私はハッとなった。私が父上の子供だからじゃないか?
それだったら辻褄が合う。小十郎は主君には忠実だ。
だから、父上の子供である私をここまでして構っているんじゃないか。


そうか、そうか。
私は頭の中で一人納得した。
納得して少し悲しくなった。
私を守る、構う理由が父上っていうのが、なんだか私が父上のおまけみたいで。


まぁ、おまけなんだけどね。
そうだよね、私一人のために小十郎が何かするわけ無い。


私は頭の布を冷やそうとして手を伸ばしてきた小十郎の手を払いのけた。


これは私の八つ当たり。


しかし、小十郎は何も言わずに、怒った様子もなく私の頭の上にある布を取り
小十郎の横にある桶の中に入っている水で冷やすと
また私の頭の上にそれを乗せた。



熱があるといってももうほとんど大丈夫なのだが
小十郎が心配していつまでも病人扱いのまま。


正直ずっと寝ているのも疲れるんだよね。
私は小十郎の顔を見ないように横を向いた。
その拍子に頭の布がずり落ちた。しかし、私は気にもせずそのままにした。


小十郎がその布を取って再び私の頭に落ちないように乗せてくれた。



小十郎は熱が出た私にずっとついていてくれた。
寝る間も惜しんで私を看病したからこんなに早く熱が下がったんだと思う。
なにもそこまで頑張らなくても良いのにと思うほど小十郎は頑張る。

別に父上も見てないんだし、手を抜いたって大丈夫だと思うんだけどな・・・・。



なんか、頭の中モヤモヤする。



その時廊下から足音が聞こえた。
その足音は私の部屋に近づいてくる。
足音が聞こえた瞬間私は体が震えた。怖くてだと思う。


小十郎はそんな私を見てか
「大丈夫ですよ梵天丸様」
と言って私の手を握るが私は小十郎の手を払った。


そして布団にもぐりこみ一人うずくまって震えた。
布越しに小十郎の手が私の背中をさすった。
これには私は何もしなかった。



「失礼します」

そう言った声は女の人の声だった。
私の部屋に女の人が来るなんて何ヶ月ぶりだろう。

それにしても何故女の人を私の部屋によこしたのか


女の人は私の部屋の襖を開けると中には入らず、その場で話した。



「片倉様、この間の事で会議を開くのですぐに参る様との事」


この間の事?会議?
私には何もわからない。

私の背中をさすっていた小十郎の手が止まった。



「了解した」


小十郎は短くそう答えると
「梵天丸様、暫くお側を離れます」と言って私の側を離れようとした。


その瞬間、私は無意識に小十郎の着物を掴んでいた。


小十郎は驚いて私を見た。
私も自分のした事に驚いた。


私は慌てて小十郎の着物から手を離した。


そして自分のした行動にただただ驚いていた。
小十郎も驚きが今だに隠せない様子。


私は無意識に小十郎の着物を掴んだ。
そして無意識に女中のそばへ行こうとするのを・・・・嫌だと思った。


全て無意識で。


自分はそんなに感情を出したわけでもない。
ましてやそんなこと思わなかったはず。
だけど・・・・体は正直なのだろうか?
これが私の考えていた事なのだろうか?わからない。


私は驚きながら、小十郎を見た。



小十郎は私を見つめた後、驚きながらも笑顔を見せてくれた。



よかった。



私は思った。
どうやら小十郎に嫌がられていなかったようだ・・・。
私は安堵の息を漏らすと同時に恥ずかしくなってきて
布団に再びもぐった。


そして小十郎がまた布団越しに私を優しく撫でてくれるのだ。



「俺が居なくても会議は出来るだろう?俺無しで進めてくれ」


小十郎が女中に言った。


「し、しかし!?」


「どうせ俺が居ても居なくても変わらないさ」



小十郎がそう言うと
女中は「・・・わかりました」と返事をして引き下がった。


私は小十郎が会議に行かなくて良いのか心配になった。


「・・・行かなくて良いのか?」



私は小十郎に聞いた


「平気ですよ。どうせ話す内容は前と同じだと思いますし。」


そう言う小十郎の顔はわからないけど声色から怒っているように聞こえた。



「それに今は梵天丸様のお側に居たいですしね」


私は胸が熱くなった。



「小十郎」



私は右目が無くなって初めて「小十郎」と言った



「はい」



小十郎は透き通るような声で言った。






「・・・・ありがとう」




私はちっぽけな勇気を振り絞ってこの一言を言った。

ここに来る前は深く意味も考えずにこの言葉を言っていたけどこの言葉を言うのに
私は心臓が破裂するかというほどの思いをした。

それだけ大切な言葉。



「・・・はい」




そして小十郎は小さく嬉しそうにそう呟いた・・・。




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bkm

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