20、教えてください。駄目なのですか?
(小十郎視点)


俺は輝宗様に命により今、梵天丸様の部屋に向かっている。
梵天丸様の様子は実際に見てはいないが話では聞いている。
まるで性格が一変したようだと誰もが言っている。
笑顔の似合う男の子でいらしたのに、あの事から笑顔を閉ざしてしまったと・・・・・。


輝宗様は俺ならば梵天丸様を変える事ができるとおっしゃったが、本当に俺なんかが梵天丸様を変える事ができるのだろうか・・・。


俺の頭の中はそんな不安ばかりが渦巻いていて自然と足取りも重くなる。


一体、梵天丸様はどのようにお変わりになられたのだろうか?
そこのところを輝宗様は詳しく話してはくれなかった。俺が思うに自分の口から自分の愛する息子のそんな行動を言いたくはなかったのだろう。


俺は、まだ義姫様の事件が起こる前の梵天丸様には何度か会った。
輝宗様に連れられてそこら辺の家臣よりは俺の方が多く梵天丸様に会っている。

俺が見た梵天丸様はみな、笑顔で優しく、そして恥ずかしそうに俺を見ているのだ。


俺は何度その笑顔に見惚れた事か


そんな梵天丸様の一変した姿なんて俺には想像つかない。



あれこれ考えているうちに俺は梵天丸様の部屋についた






「失礼します梵天丸様」





俺は息を整え言った。
梵天丸様の返事を待とうとしたが、返事するとも思わない。そしたら、すぐに開けて今ある梵天丸様の姿を見たほうが良いのではないか?
という考えにたどり着き、俺は襖を開けた。



「っ!?」



俺は思わず息を呑んだ。


俺の目の前には布団に包まりその僅かな隙間から俺を睨んでくる一つ瞳があった。
その瞳に俺は恐怖を覚えた。

それと同時にその瞳からなんともいえぬ感情が俺を襲った。


ゆっくりと、俺は梵天丸様に近づいた。




「・・っ、やめろ!!こっちに来るな!!!」




かすれた声で梵天丸様は言った。しかし俺は梵天丸様に近づいた。




「来るなって言ってんだろうが!!」



梵天丸様は汚い言葉を発した。昔はそんな言葉使わなかったのに、急にだと皆は言う。
俺も梵天丸様の性格が一変したのではないのかと思った。



梵天丸様とそれほど離れてはいないと思えるような距離になったとき
梵天丸様は、布団から飛び出して逃げようとした。


俺は梵天丸様の腕を掴んだ。



そして、今改めて梵天丸様の姿を見た。
性格や顔の表情ではなく、その体型も昔の梵天丸様の面影は無かった。


がりがりに痩せていて、骨が浮き出ている。
掴んだ腕もほとんど骨と皮だけといった感じだ。



「どうか逃げないでください」


俺は慌てて梵天丸様に言った。


「放せっ!!」


梵天丸様は痩せたその体で一生懸命に俺の腕を振り払おうとした。
そんな体では全然駄目なのに。




「梵天丸様お願いです。この小十郎の言葉を聞いてほしいのです」



俺は何とか梵天丸様に俺の存在を知ってほしかった。



「お前の言葉など聞きたくない!!」



「私は梵天丸様の父上、輝宗様の命によって梵天丸様に今日からお仕えする事になりました。」


梵天丸様は聞きたくないと言ったが俺は何故梵天丸様のところに来たのかと言うわけを話そうと思った。



「お前などいらん!!俺の前から消えうせろ!!」



梵天丸様は俺を遠ざけようと必死だ。それがよくわかる。



「それはできません。私は梵天丸様にお仕えする身、梵天丸様の目の前から消えてしまってはお仕えする事ができません」



「煩い!!さっきから言ってるだろうがお前などいらん!!消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ消えろ!!!!」



消えろ、と言う言葉を連呼する。
その言葉にはなんともいえない重みがあった


そして、梵天丸様は俺を殴った。
まず最初に顔面。次に腕。胸。頭。
殴り終わったと思ったら今度は爪で引っかいた。どちらともおもいっきり。
引っかかれたところは蚯蚓腫れになって血が滲んできた


それでも俺は何も言わずに耐えた。
こんな痛み、梵天丸様の痛みに比べたら・・・・。そう思ったからだ。



殴る時の梵天丸様は、泣きそうな顔をしていた。
そんな顔で俺を殴っていた。俺は心が痛かった。
こんな俺を殴って心が晴れるのならば俺は喜んで梵天丸様に殴られよう。そうさえ思えた。
何故だろう。何故か俺は梵天丸様のためらなばなんでもしてあげたいと。



そして殴られ、引っかかれる中俺は思った



何故梵天丸様はこんなお姿をしているんだろう。こんなにも折れそうな体で。
何故梵天丸様はこんなにも苦しんでいるのだろう。そんな表情をして。
何故梵天丸様だけがこんな思いをしなければならないのだろう。今にも泣きそうな。




「っ!」


梵天丸様が俺の腕を噛んだ。
俺は思わず顔をしかめた。腕がズキズキと痛む。


梵天丸様は俺の腕を放そうとしない。だが、俺は別にそれでも良かった。



何が良いのか自分でもよくわからないが・・・・・。




俺は空いている手で梵天丸様を包み込み、頭を撫でた。


これ以上そんな顔をしてほしくない。これ以上悲しまないでほしい。
全て自分だけの中にしまいこんでほしくない。


そんな願いを込めて。


梵天丸様は俺の顔を見て目を丸くしてから腕から口を放した。


梵天丸様。


そう言おうとした時梵天丸様は俺の胸に倒れこんだ。


「梵天丸様!?」


一体どうしたと言うのだ!?
俺は慌てて女中を呼んだ。女中は医者を呼び、梵天丸様は疲労によるのもで倒れたと報告された。


急に体を動かしたから今回のような事になったんだと医者は言う。


梵天丸様の部屋には輝宗様も来た。俺は申し訳なくて輝宗様の顔を見れなかった。



梵天丸様、貴方様は何を望んでおられますか?小十郎が開いた穴を埋めて差し上げる事ができますか?
小十郎では力不足ですか?



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bkm

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