17、どうすれば良い?なんて言って。
私はあれから変わった。

必要以上のことは話さない、笑わない、会わない。

そうやって過ごした。

だって・・ねぇ、私のせいでまた誰か死ぬかもしれないじゃん?みたいな?

父上も私を変えようと頑張ってるけど・・・ごめんね。私変わりそうにない。




(輝宗視点)


「輝宗様お呼びでしょうか?」

俺の部屋に入ってきたのは小十郎。俺のもっとも信頼する家臣だ。

小十郎は俺の前に座ると俺の瞳を覗き込むようにして見た。


真っ直ぐな瞳。燃える様な瞳。
その瞳の中に少し不安の色が見えるのは梵天丸のことだろう

俺は手に煙管を持ちながら小十郎の方に体ごと向けた。


「お前も気になっている梵天丸の事だ。」

そう言うと小十郎は唇をぎりっと噛んだ


「梵天丸はもう前の梵天丸ではなくなってしまった・・・あいつのせいでな。」


あいつ・・・と言うのはもちろん義姫のことである。


「・・・」

小十郎は何も言わない。


梵天丸は笑顔の似合う子供だった。それに頭もよく考える事は大人同様。
将来が楽しみなくらいだった。

義姫も可愛がっていた。だが義姫は梵天丸の右目がなくなると態度を一変させて梵天丸を嫌った。
ありえなかった。

何故あそこまで可愛がっていた梵天丸にあんな態度をとれるのかわからなかった。

あいつのせいで梵天丸を可愛がっていた千代と小萩も失ってしまった。


俺は梵天丸の右目がなくなっても変わらず愛を注いでいた。
千代と小萩の代わりになろうとした。


しかし、梵天丸は変わらない・・・。

やっぱり俺だけじゃ駄目なのか?


「小十郎、やっぱり俺だけじゃ梵天丸は変えさせられないのか?」


俺はつい小十郎に聞いてしまった。
こんな質問、小十郎が返答に困るじゃねぇか。

そうは思っても出てきた感情はとめられなかった。


「俺は梵天丸が好きだ。また梵天丸の笑顔が見たい。義姫の変わりに俺が梵天丸の心を埋めてやる
義姫の何倍も・・・それと千代と小萩以上に・・・・。
千代と小萩が梵天丸を可愛がっていたように俺も本を読んだり!一緒に植物を見たり!!

・・・しかし、梵天丸はそれでも変わらなかった。

俺じゃ駄目なのか?俺じゃ梵天丸は変えられないのか!?」


俺は感情に任せて小十郎の胸倉をつかんでそう叫んでいた。


瞳に涙がたまっているのがわかる。
眉間の皺が取れる気配がしない。


俺は小十郎見せ中を向けた。


「輝宗様・・・。」


小十郎は小さくそう呟いた。


「いえ、輝宗様でしたらきっと梵天丸様の心を埋めてくれるでしょう」


小十郎はそう言ってくれたが、俺じゃ駄目な事はこの一年でよくわかった。


俺は小十郎の方に顔だけ向かせた。



「俺じゃあ駄目なんだよ」



自分で小十郎に聞いていて自分で結論を出してしまった。

小十郎はどうしたら良いかわからないといった状態だ。


このままじゃあ小十郎が可哀想だ。


「俺じゃあ無理なんだよ、小十郎。」

もう一度そう小さく呟いた。


だから


「だから小十郎、お前が梵天丸の心を埋めてやれ」


俺の変わりに


「私が梵天丸様のお心を・・・?」


「そうだ、お前に拒否権はねぇ。
そうと決まったら早速今日からお前は梵天丸に仕えろ」


「し、しかし!!」


「小十郎、俺に逆らうのか?」


鋭い眼差しが小十郎を貫いた


「っ・・・・いえ・・この小十郎。この命にかけても梵天丸様を変えて見せます。」


そう言って小十郎は俺に頭を下げた。



もう一度俺の瞳に映った小十郎の瞳には迷いがなかった。

しかし、やはり不安の色が少しある。


だが、こいつなら大丈夫。そういう気持ちが俺にはあった。

何故そう思うのかわわからないが、この俺の勘がそう言っている。



「俺の変わりに梵天丸は任せたぞ。
小十郎、梵天丸のところに行ってやれ」


「はっ」


そう言うと小十郎はしっかりとした足取りで部屋を出て行った。



小十郎がいなくなった部屋で俺は静かに立ち上がると縁側に座り透き通るような青空を見上げた。


煙管に火を付け口に運ぶと独特のにおいと味が口と鼻に広がった。



「俺では駄目なんだよ小十郎」



お前じゃなきゃ。


その言葉の中には期待と嫉妬が見え隠れしている。


なぁ小十郎。

俺はお前に妬いてんだよ。



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bkm

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