まだ義姫の出来事が最近と感じるころ。
私は一人自分の部屋にいた。
いつもだったら千代と小萩が私のそばに居るのに・・・。
そう考えると悲しくなってきて涙が出てきた。
義姫にああ言われるのはわかってたけど、二人が斬られるのはわからなかった。
誰も二人のことは言わないけど私はなんとなく周りの空気でわかった。
二人は死んだんだ。
こんな私のために!!
こんな居るだけでなんの役に立たない私のために!!!
二人は死んだ!!
私は大丈夫だから二人には生きててほしかった・・・。
私の頬をつーーーっと涙が流れた。
私はその涙を拭おうともせず空を見ていた。
きれいな澄んだ青空だ。
私はこの空が憎くなった。
私がこんなに悲しんでいるのに何で青空なの!?雨でも降ればよかったのに・・・。
ああ、どうして。どうしてこうなったんだろう。
神様は居るんじゃなかったの?私をこの世界に飛ばしてくれたのは神様じゃなかったの?
こんな事なら私はこの世界に来なければよかった。
そうすればこんな思いしなくてもすんだのに。
私は梵天丸でも、これは私の知っている梵天丸の歴史ではない。
この歴史は私がつくっていくものだ。
最近はそう思ってきた。
なんで、私はここに来たの?なんで神様は私を選んだの!?
どうせだったら、あのまま私の居た世界でのんびりつまんない毎日を過ごして、ゲームのバサラで友達とキャーキャー騒いでいた方がよかった。
これからもとの世界に戻してとかダメかな?ダメだよね・・・・。
大丈夫ちょっと考えただけ。
「梵天丸様」
私はいきなり女中さんが話しかけてきたので驚いた。
女中さんは襖を両手で開けて入ってきた。
二人が無くなってから私は女中さんに会わなかった。
ほとんどを父上と過ごした。
なので、まともに女中さんと向かい合ったのは今回が初めてだ。
「梵天丸様朝餉を用意いたしました」
そう言って女中さんが私に近づいてきた。
その時私はなんともいえない気持ちに襲われた。
「いやだ!!!!!!」
気付いたら私は女中さんに叫んでいた。
女中さんがびくっとして私を見る。
「ど、どうなされましたか梵天丸様?」
と言って私に触れようとした時私はその女中さんの手を叩いていた。
赤くなった女中さんの手。
まだ何が起こったのかわからないといった状態だ。
私もなぜこんな事をしたのかわからない。
私は自分の手を見た。
手は震えている。体も震えていた。
私はさっきの変な感じを思い出して考えてみた。
その間にも女中さんは顔を真っ青にして部屋を出て行ってしまった。
何で体があんな行動を取ったのかわからない。
ただ、もしかしたら。
体は自然に女中さんを恐れているのかもしれない。
それか、二人のことがトラウマになったか。
あの事で私の体は自然と女中さんを避けているのか・・・。
二人のようにはならないように・・・。
そして、そんなことがあって私は女中さんを受け入れられなくなってしまった。
私のところに来るのは父上かその家臣達かになってしまった。
父上とも話をした。
・・・・・・・・・
「梵天丸、どうして女中にあんな態度を取るんだ?」
「わかりません」
「わからない?」
「はい、わかりません」
「・・・それじゃあ俺にもわからねぇな・・・。
何か心当たりはあるか?」
「はい、あります」
「っ!?なんだ?話してみろ」
「小萩と千代です」
「・・・そうか」
「多分体が拒否してるのでしょう。
それとも本能で誰も傷つけないようにしているのでしょうかね」
「・・・・・」
・・・・・・・・・・・
私の女中さんへの反応は変わるものではなかった。
体が無意識に反応する。
近づいてくると吐き気がするんだ。
お風呂の時は女中さんとじゃなく父上と入るようになった。
着替えは自分で何とかなったから大丈夫。
この家で私が女だってわかる人は、父上と自分だけになってしまった。
大丈夫、二人が守ってきた秘密は私が受け継ぐよ。
ごめんね、私なんかがいて。
できることならもう一度二人に会いたい。