12、喜びは手の中。
あれからだいぶ時が経ちました。
父上と義姫は来てくれるのに小十郎は来てくれません。
待っても待っても来てくれません。

私は三歳になりました。
春風が吹く。
暖かい陽射しが体にあたりとても気持ちが良いです。


春眠暁を覚えずと言いますが、全くその通り。眠くて眠くて死にそうです。


寝れば良いだろうとか思うけど、なんか寝るのもあれなんだよね・・・・・。
(あれって何だ?とか言わないで!!)


私の隣にはいつものように小萩と千代。
二人とも今日も輝いていてとても可愛いです。


それよりも、なんで私さっきから「です」「ます」」口調なんだろうね?
まぁ、そんなことはどうでも良いや・・・。


あーーー、春だな。


桜が見えるよ。


てか、花粉で鼻水が・・・・。
あれ?こんな事前にも言ったような気がしないでもないような・・・。


「梵天丸様」

私があくびをしたと同時に千代から声がかかる。
おまっ、人があくびしてる時に!!


「ふぁっ・・・・なぁに?ちよ。」


出てきた涙と鼻水をそのままにして醜い顔のまま私は千代の方に顔を向けた。


千代は優しく微笑んで私の涙と鼻水を拭いてくれた。

おっと、こりゃすまないね、可愛い子にやってもらっちゃって。


「梵天丸様は桜がお好きなのですか?」


なんて事を千代は聞いてきた。
なんだ急に、いつも思うけど唐突に質問がくるよなぁ・・・。


別にかまわないけど。

で、なんだっけ?桜だっけ??
嫌いじゃないな・・・・。むしろ好きなほうだな!


「うん!!さくらすきぃ!!!」

と、元気よく私が答えると二人は優しく私を見た。

な、なんだよその笑みは!!


「桜は良いでございますよね。きれいで、美しく愛らしい。
まるで梵天丸様のようですね。」


そうかい?いゃあなんか照れるなw


「しかし、桜は咲いてはあれよあれよという間に散ってしまいます。
梵天丸様は決してそのような事はないように・・・。

長らく美しく気高いお方になってくださいね。」


この二人。千代と小萩はまだ小さい私にこんな風に言ってくる。
まだ小さいからわかんないと思うんだけど、二人は言ってくる。


これは、二人に願いだよね。
この乱世、長らく生き延びてほしいという願いなんだよね。


私は、最近こういうことを言うのが多くなった二人の事は解っていると思う。
解るよ。
私に今のうちから死ぬなって言ってるんだよね。


それに引き換え義姫は天下天下って煩くって・・・。

私、どうせだったらこの二人のどちらかの子供が良かったな・・・・。



私はそんなことを考えて二人に微笑んだ。
すると、廊下から足音がする。


誰だろ。父上かな??


足音はだんだん近づいてきて私たちがいる部屋の前で止まった。


しかし、その人はなかなか、中に入ってこようとはしない。


なんだ?さっさと入って来いよ!!
じれったいなぁ・・・。


がらり。私の部屋の襖が開いた。


さっきの言葉前言撤回。


目の前にいたのは、私が会いたかった片倉小十郎その本人だった。


私は嬉しくて


「こじゅうろう!!」


と、大声で小十郎に抱きついた。


小十郎は「うおっと」と言って私を抱きとめた。


うへぇぇぇぇぇ小十郎だぁぁぁぁぁwww

私の脳内パラダイス(うっほい☆


「まぁ、小十郎様どうしたんですか?」

と小萩が言うと小十郎は「いや・・ちょっとな・・・。」と言って小萩から顔をそらした。


小十郎は私を畳みの上に降ろす。
小十郎の右手にはいつから持っていたのか桜の枝が握られていた。


小十郎は少し照れくさそうにしながらその桜の枝を私に差し出した。


ふぇ?


いきなりの事で状況がつかめない私。


「・・・桜がきれいだったから、梵天丸様にあげようと思いまして・・・。」


きゅんWW


あ、今わたしきゅんWってなった!!


あーーーもうなんなんですか!!貴方様は!!
私を萌え死にさせたいんですか!?


私は小十郎の手から桜を受け取る。
そしたら、小十郎が優しく微笑んでくれた。


私この小十郎の笑顔に弱いんだよ。


「梵天丸様よかったですね!
小十郎様、梵天丸様に桜をありがとうございます。
梵天丸様は桜がお好きなのですよ。」

小萩がそう言うと小十郎はほっとしたような顔になった。


「用はこれだけだ。桜を梵天丸様に渡せてよかった。」


と言って小十郎は部屋から去ってしまった。


たったこれだけの時間なのに幸せがやばい。
私幸せすぎて死んじゃう!!どうしよう!!


私は小十郎からもらった桜を大事に大事に握り締めた。

けれども桜はすぐに散ってしまう。


そう考えると悲しい。
私は、桜の花弁を一枚取るとその花弁を口の中に入れた。

もちろん、千代と小萩に気付かれないように。


こうすれば、私の中に小十郎のくれた桜の花弁がずっとある。


そんなことを考えながら私は桜の花弁を飲み込んだ。




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bkm

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