(小十郎視点)
輝宗様に連れられて書斎に行く事になった。
輝宗様は素晴らしいお方だ。人をまとめる力もあり、戦でもその力を発揮され、頭の回転も速い。また優しさもある。
そんな輝宗様だからこそ皆がついていく。いや、ついていこうという気にさせる。
俺はそんな輝宗様に使えることが出来てすごく幸せだ。
廊下を歩くと庭の方に人がいるのに気が付いた。
・・・子供と女の人が二人。
女二人は女中だろう、だが、あの子供は一体どこの子だ?
まぁ、そんなことは後で輝宗様に聞けばいいか。
なんて俺は軽い感じに受け流した。
目線を前に向け輝宗様の後ろを歩いていると、その庭のほうから足音が聞こえてきた。
なんだ?と横を見てみると、さっきまで遠くにいたその子供がすぐそこまで来ていた。
すると俺の前にいた輝宗様が
「どうした梵天丸?何か用事でもあるのか?」
と言った。
その時俺はそういえば輝宗様にお子様がいたのを思い出した。
どうして忘れてたのだろう・・・俺ともあろうものが・・・・・。
もの凄く輝宗様に申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
・・・?輝宗様が梵天丸様に話しかけているのに梵天丸様は返事をしない。
梵天丸様を見ると梵天丸様の瞳は俺に向けられていた。
大きくて綺麗な瞳。その瞳の中には何か熱い思いがある。そう思った。
そんな梵天丸様の瞳から俺は目が離せなかった。
白く綺麗な肌。輝宗様と同じで明るい色の髪。ぷっくりとして紅い唇・・・って俺は何を考えているんだ!!!!!
変な考えはよせ!!!!
とりあえず俺は変な考えを止めるように梵天丸様に微笑んだ。
その後ビックリしたような、泣き出しそうな顔になったのはなぜだろう。
そして、梵天丸様はその泣き出しそうな顔で微笑んだ。
俺はその笑顔に不覚にもときめいた。梵天丸様はまだ二歳でしかも男子であられるのに・・。
「梵天丸、こいつは片倉小十郎といって俺に仕えてる奴だ。」
「はじめまして、片倉小十郎と申します。」
梵天丸様はまた微笑んだ。今度はあふれんばかりの笑顔で。
その後すぐに二人の女中が梵天丸様をつれて行ってしまったが俺はまだ梵天丸様の笑顔の余韻に浸っていた。
・・・そうだ、こんなところでこんな事をしている場合じゃない!!
「輝宗さm・・・・・・・・。」
輝宗様のほうを振り向くと、梵天丸様に無視されたからだろうか・・悲しみのあまり輝宗様はしゃがみこんで廊下に
『の』の字を書いていた。
く、暗い・・・・・。
「て、輝宗様!!書斎に行って仕事をしなければ!!」
「・・・・ああ・・・わかってる・・・・いいよなお前は梵天丸に微笑んでもらったんだから・・・・・。」
と言って、はぁ・・・と深いため息をついた輝宗様
通りでさっき俺を紹介した時に声に覇気がなかったわけだ。
「ほら輝宗様そんな事をおっしゃらずに仕事をしなければいけませんよ。」
俺は無理やりごまかした。
輝宗様の背中を押し書斎の中に入った。
書斎に入り仕事を始めても輝宗様は生気を失ったようだ・・・・。こうなったらもう自然と元に戻るまで待たなければ・・・・。
道のりは長い。
それにしても梵天丸様。可愛らしいお顔をされていた。
(胸が疼く様なこの気持ちは何なのかわからない。)