空気を作ろう [ 5/5 ]

どうも、おはようございます、こんにちは、こんばんは、名前です。
いきなりで悪いけど俺なんか死んでしまいました!
いや、そんな軽く言われても困るって?いやいや俺だってそんな事言われたら困っちゃうよ?無理やりテンション上げるしかないんだよ?察して?

実はですね、この俺名前は平成という技術と科学が発達した世界に生を受け17年間何も無くごく普通にそこら辺にいそうな男子高校生として過ごしてきたわけですよ。
ところが何故だか車にどっかん轢かれてお陀仏してしまったわけです。
しかも飲酒運転の!最悪だよね!

と思っていたのも束の間、俺は赤ん坊になっていた。
それこそは目が飛び出るんじゃないかって言うほど吃驚したね。
だって手とか小さく愛らしい紅葉のおててだし、「あー」とか「だぶー」しか言えないんだもん。
おしめ替えられる時とかもう死にたくなっちゃうよね!

しかも、俺が生まれたって言うのがまたまた吃驚、戦国時代だったわけですよ!
大好きだったハンバーグやパスタが食べられないって知ったときは泣きたくなったね。いや、実際泣いたね。

そんな、前世の記憶を持ち合わせた俺なんですが、段々大きくなるにつれ神童だ!なんて騒がれるようになりました。
まぁ、普通の子供じゃないですからね。中身はもう立派な青年ですからね。
あまり泣かないいし、騒がないし、言葉は元々理解していたから、文字を勉強して理解した文字で本を読んでいたりしていたら周りが騒ぐ騒ぐ。小さい村だったから村中が騒いでたよ。
けど実際2歳くらいの子供は普通に喋ってたり本を読んでたりしたら気持ち悪いよな。皆変わってるな!

俺の生まれた家が武器職人の家だったからもう親父なんか「お前を立派な跡継ぎに育ててやる!」って無駄に張り切って幼い頃から武器の事を叩き込まれたり

「武器を造る者は武器の恐ろしさを知れ!」とか訳わかんない事言われて、真剣で手合わせしたり何故か組み手をしたりと英才教育を受けてきました。

武器を教えている時の親父と言ったら怖い。
普段温厚の親父が般若のような表情に豹変する様はほんとに震え上がるほど怖い。
その父の顔を見た弟達や近所の子供が見たら泣き叫びはじめるので、俺は長男だったから弟達を一生懸命慰めていたのはいい思い出。弟可愛い。

そんな、鬼のように恐ろしい親父に一から教えてもらい、武器を作ってみたら物凄く褒められる!
俺の処女作(8歳)なんて適当にカンカン打って(遊び感覚)、水にジュワッっと付けて(音が好きだったから!)、色々やってたら小さな刀になってその出来を見て親父が泣くほど感動した。鬼の目にも涙とか思ってないんだからな。

なんで武器を作っただけでこんなに喜ばれるのかよくわからないけど、きっとアレだろう。
こんな小さかった子供が頑張って武器を造ったっていうその気持ちが嬉しかったんだろう。

あとは、言われるまま12歳まで武器を作っていたら、たまには変わった物を造ってみたいっていう気持ちが働いて
平成のゲームの中に出てきた武器とか真似して造ってたら、たまたま買いにきてくれた金持ちのおじさんに「気に入った!」とか言われてそれが結構いい値になった。

そんなこんなで、俺の家の武器は全国に通用するくらい有名な武器になったとさ。めでたしめでたし。

え?小さい頃から武器ばっかり造って嫌にならなかったかって?
それが、俺としては造れば造るほど金になるからそれほど苦でもないし
なんか造るのが楽しくなってきちゃったんだよね!

なんて言うの?自分の思ったとおりの武器に仕上がるとすっげぇ嬉しいわけよ!
自分の手で息子を製作している感じ?
しかもそれを褒めてもらえると子供心(?)ながらに嬉しく、調子に乗っちゃったわけですよ。

だけどここで問題が起こった。
武器造り=遊べない=友達が居ない

………うん。家に引きこもってたからね。ヒッキーだったからね。
友達っていうかたまに近所の子供と話すぐらいだったし、ね。つまりは、俺は物凄くシャイになってしまったわけですよ!

だってもう10何年ってまともに他人と話しとかしなかったんだよ?
話だって嫌われないように、相槌打つくらいだったし!だって、だって余計な事言ったら「何口出ししてんだよテメー」とか言われるんじゃないかって思ってたんだから!

というわけで俺は17歳にして、彼女居ない、友達っていえるほどの人が居ない、暗い、武器職人になったわけですよ。ははっ。なんか目から汁出てきた。
平成に生きていた時は普通に会話出来たのにな……時の流れって恐ろしいな。

時の流れって言ったら、俺、今17歳だけど中身は34歳のおっさんだよな。
近所の同い年の子供が遊んでるの見て「子供は元気だな」なんて考えてたんだもんな。
考え方も違うし、なんか年ってこうして考えると、切なくなるな……。もう、年なんて考えないようにしよう。そうしよう。

そんな俺だが、実は今人生最大のピンチに陥っている。


「名前」
「はい、父上」
「お前を立派な武器職人にするためこれから旅に出てもらう」
「……(はっ)!?」
「全国を渡り歩きお前が思う最高傑作を造って来い。期間は3年とする」
「……最高傑作」
「金は今までお前が稼いだ分を渡す。また、武器が出来上がり俺が認めたらこの家をお前に譲る。」
「……。」
「お前なら必ず歴史に名を残すほどの名刀を造れると信じているぞ。」
「……はい。」

親父からのプレッシャーが半端ないです。
期待しないで待っててください!お願いですから!歴史に名を残す名刀?俺に造れと??無理無理無理無理。何考えてんの?つか、何期待してんの?あんた自分の息子美化しすぎだよ??
意味わかんねぇよ!!ギャース!

脳内で親父に対する気持ちをぶつけながら、俺の、この人生に静かな日々を過ごすという日は老後しかないのかもしれない。なんて言葉が浮かんできた。





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