だ だいだい色のお花を君にあげたくて世界中を駆け巡る僕は [ 4/5 ]
俺が前の世界「平成」で命を落としてから一体どのくらいの月日が過ぎたのだろうか。
前までは女として人生を真っ当していた俺だったが、今こうして死んで転生した先は何とも面白いことに戦国BASARAの世界だった。
しかも俺は片倉小十郎となってこの世に生を受けた。最初は
えっ!?小十郎!?こじゅ!?マジこじゅ!?私が!?マジワロスwwwwwwwなんて馬鹿げていた俺だったが
下半身についた立派なブツと共に立派なヤクザ顔負けの青年へと成長を遂げた。
家は昼ドラも顔負けのドロドロ展開だったがそれを乗り切ればなんとあの伊達輝宗様から直々に伊達に呼ばれ
こうして今伊達の為に働いているという素晴らしいシンデレラストーリー。
……まぁ、シンデレラではないがな。
そんな俺の生い立ちは置いといてだ、今現在16となった俺は梵天丸様、つまりは将来伊達政宗と名乗る人物の守役となった。
勿論皆分かっていると思うが梵天丸様は5つの時に天然痘にかかり、右目を失ってしまう。正確には俺が右目を抉り取ってやったのだがな
最初こそツンツンしていた梵天丸様。
右目を失い、母親にも嫌われ、全てを投げ出そうとしていた幼い子供。
史実通りなんてクソ食らえなんて考えていた俺だったが、もう無いだろうと思っていた母性本能のようなものが働いたのかどうか知らないが、そんな梵天丸様が酷く愛おしくも愛らしかった。
俺は梵天丸様が少しでも明るく暮らせるように、楽しく暮らせるように、幸せになれるように、そう思いながら必死に梵天丸様を受け入れた。
殴られ、噛まれ、蹴られ、まるで獣のような行動に音を上げそうになったが、梵天丸様の方が辛い目に合ってると思ったら痛みなんて感じない。
可哀想とは決して言わない。言うなれば少し人生に拗ねている梵天丸様。そんな梵天丸様の全てを包み込むようにと、痛みが少しでも和らぐことを願って優しく抱きしめた。
そんな事をしているといつの間にか梵天丸様に少しずつ変化が見え始めた。
まず最初にきちんと挨拶をするようになった。そして目を合わせるようになった。何よりも笑顔が増えた。
きちんと幼子の姿になってきたのだ。
次第に周りの反応も変わり、梵天丸様は前のように嫌味や陰口を叩かれるのではなく、受け入れられる存在になってきた。
そうなるまでに大体一年かかった。
笑顔で庭を駆ける梵天丸様を見て俺は思わずほろりと涙を零しそうになってしまった。長い一年だった。
元気に走り回るその姿を見て俺は将来梵天丸様がどう成長するのか楽しみに思えた。
子供は成長が早いというのを実感する俺は爺臭いか?
そんな梵天丸様に一つ何か言うとすれば、アレだ。
少々親離れというか、この俺、小十郎離れが出来ないことが不安だ。
「小十郎ーー!!」
噂をすれば梵天丸様が庭から花を摘んで俺に持ってきた。
笑顔で花を持っている様子が何とも可愛らしい……。俺は顔が緩むのをぐっ、と堪えた。
「なんですか梵天丸様」
そう言えば梵天丸様はその手に持っている花を俺に差し出し「こ、これ!小十郎にやる……」
と少し頬を赤らめるその様子はまさに天使。
頬が緩むほどではなく発狂寸前の俺。足を手で思いきり抓りながら俺は笑顔で梵天丸様に
「ありがとうございます梵天丸様。この花は梵天丸様の様に愛らしくいらっしゃいます。この小十郎大切にいたしますね」と言えば
梵天丸様はぱぁっと周りに花が咲いたような笑顔を見せ、嬉しそうに俺に抱き付いてきた。
小さな体。ぷにぷにと柔らかい腕、可愛らしい梵天丸様のお顔に俺の心臓は壊れそうだった。
ああ、俺も梵天丸様依存症なのだろうか。
なんとも清々しい青空を見上げれば耳元で可愛らしい声笑い声が聞こえてきた。
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