佐助だ……BASARAの佐助が目の前に居る。


私は私に苦無を突きつけている佐助に目を丸くした。
タイムトリップだと思っていたこの世界はどうやらBASARAの世界で、私はトリップしていたらしい。
私は瞬きせずに佐助を見た。佐助がなにやら一人で騒がしいがそこは気にしない。

いやいや待てよ自分!気にしようよ!!そう、さっきから佐助は私の事を風魔風魔と言っている。それは多分この髪のせいだと思うんだけど!!風魔も居るのだったら会いたい!BASARAキャラ全員に会いたい!!
それよりも、さっきから突きつけられている苦無が物凄く怖いんだけど……


しばらく佐助の行動を見ていると佐助が「じゃああんたは誰なんだ!」と言ってきた。
だから私は母に貰った大事な名前「紅太郎」と言った。

そしてそれからすぐにお爺さんお婆さんの私を呼ぶ声が聞こえてきた。佐助はその声に気付いてか闇のようにすっと消えていった。
目の前で見れた婆娑羅技に感動しながらも私は私を心配してきたお爺さんお婆さんに自分は大丈夫だということを告げてから水を汲み二人と共に家に戻った。
それからというもの私は段々と現状を理解してきたのか体が疼き、すごく興奮しているのが分かった。

ここはBASARAの世界で、佐助に会って、ってことは佐助以外にもキャラは居るということで!!
私は世界が一気に広がった気がした。生まれてはじめて感じたような爆発するような感情に私はただただ体を動かすことしか出来なかった。
森の中を走り回って跳んで跳ねて、そういえばそう分かってから体が物凄く軽い。これがBASARAの世界というものなのか!!
私は感情に任せて木を上り森を見渡した。見慣れた森がすごく新鮮に思えた。
ああ、ありがとう!この世界に連れて来てくれて!!誰か分からないけど物凄く誰かに感謝したい気分だ。
だからとりあえず私を産んでくれたお母さんに、そして私を今まで育ててくれたお爺さんとお婆さんに、そして私をここをBASARAの世界だということを気付かせてくれた佐助に感謝した。


もう一度佐助に会いたいな。
そういえば、と、私は考えた。

もし、もし、私のお父さんが、風魔小太郎だったら、それだったら、凄く幸せなのに……。
この髪、瞳、もしかしたら小太郎からきたものかもしれない……。いや、もしかしたら全く知らない人かもしれない。
だから、期待はしていない。だから私ははやく大きくなってBASARAのキャラに会いたいと思った。まだ4歳という年齢。小さすぎる手足。
大きくなったら旅をしよう。そして皆に会おう!会えることはたやすいことじゃないけど、それでも私は頑張ろうと思った。

肩まで伸びた髪を片手で掬い私は髪を見つめた。
この髪はきっと好奇の目に晒される。だから隠しながら。瞳も隠しながら、そうしてひっそりと。髪を頬に寄せ、私は現実と向き合った。
私はこの髪が好きだ。母が好きだから好きだ。私が好きだから好きだ。瞳だって好きだ。だからこの髪と瞳をこころから綺麗だといってくれる人と共になりたい。
小さな私には結婚とかまだ早いけど、そうなれたらいいな、見た目は普通では無いけれど普通の平凡な日々を過ごして行きたい。

もしそれが許されなかったとしても、私は私の好きなように生きよう。
誰にも縛られること無く自分の人生自由に生きよう。

そして、出来たらお父さんにも会えたらな、なんて思ってる。そしてまた淡い期待を胸に抱きながら。




(佐助視点)

俺様は仕事を部下に任せて小田原へ行く為に走っていた。
風を切るように走ればそれほど時間をかけないで小田原へは着ける。
小田原に行くまでは簡単だ、しかし、風魔に会うまでに命が持つかどうかが問題だ。
小田原に着く前から嫌でも伝わる殺気に、流石「伝説の忍び」と洩らしながら小田原城の上に立った。
すると、すぐに真後ろから刀が急所を狙ってくる。それを手裏剣で受け止め「風魔少し話をしに来たんだ!!」と声を張り上げ言うと少し風魔の力が弱まった。
しかしまだ油断はできない。手裏剣を手に持ちながら風魔との距離をとる。

風魔は刀を両手に構えているが殺気は薄くなっている。
それを確認しながら俺様は口を開いた。

「なぁ風魔。あんた子供とか居る?」

その質問に風魔は首を振った。
やっぱりな、風魔のことだから子供なんて作るわけないと思ってたけどさ!!
けど、だったらあの子は一体なんだんだ?ただの他人の空似……だが、気配は風魔に似ていた。いくつもの人を気配だけで察知していた俺様が間違えるわけ無い。
という事は風魔が知らないうちに女が子供を産んでいたということか?
だが、その前に風魔が女を抱くなどというのは考えられない……。俺様は風魔に会っても頭を抱えることしか出来なかった。

「じゃあ、女を抱いたとかは??出来たら大体3年から5年の間」

風魔だって覚えているわけ無いと思うが、とりあえず俺様は何か言って質問したかった。それに、黙ってたら風魔に攻撃されそうだしね……。

風魔は暫く考えると静かに首を縦に頷いた。

「嘘ぉ!!!!!!」

考えても居なかった風魔の答えに俺は思わず大きな声を上げてしまった。
だって風魔が女を抱いたんだよ!?忍びは普通情報を得る為に体を交えたりするものだけどどうも風魔からそれが想像できない。
交える前に自力で情報を得そうだからだ。


「一体いつ!?」
という俺様の質問に風魔は「―五年だー」と答えた。正確には唇を動かした。
「誰とヤったのさ!!」
思わず前のめりになるような勢いの俺様とは対照的に風魔は涼しい顔をしていた。

「−護衛を任されていた環姫とだ―」

俺様はそれこそ口が開かなくなった。
環姫といったら日ノ国で三本の指に入るほどの美女だということで有名だった。家柄は裕福な方で多くの男性から婚約を申し込まれていたという。
俺様も一度みたけどあれは本当に綺麗な人だった。今でも頭の記憶に残るほど、中々お目にかかれない美人だった。

だがその環姫は婚約を断られたといって、どこかの戦国大名に戦を仕掛けられ滅びたはず。
てっきり環姫も死んでいたと思っていたのだがもし、生きていたら……。

もしかしたらあの子は、二人の子供かもしれない。


「それにしても風魔が女を抱くなんて珍しいね、惚れちゃったの?」
とふざけたように言えば「−抱けと命令されたからだ―」という。その答えに妙に納得しつつも俺様はもしかしたらという忍びらしくも無い考えを張り巡らしていた。

そして俺様は「分かった、ありがとうね風魔」と言って俺様は早々と姿を消した。




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