(佐助視点)

陽が少し傾いた頃、風魔は一人川から水を汲みに外に出ていた。
この機会を逃すわけも無く俺様は風魔の後についていった。
小さな体で一生懸命桶を持って川に向かう姿は、あれだ……風魔だと分かっていても可愛い。
後ろで密かにきゅんきゅんしながら佐助は本来の目的を思い出した。
川に着いた風魔に静かに近づき首元に苦無を突きつけた。

「ねぇ風魔何してるのかなーー?」

へらへらと笑いながら俺様は風魔の反応を待った。
しかし待てども待てども風魔からはなんの反応もない。長い沈黙のあと何かがおかしいと気が付いた。
苦無を首に押し付けながら俺様の方を向かせると、そこには目を丸くして俺様を見ている風魔の姿があった……ってこの反応おかしくない!?

「あ、あれーー?風魔俺様の事忘れちゃった??」

自分でも口元がぴくりと無意識に動くのが分かった。
しかしそれでも風魔からの反応は無かった。試しに目の前で手を上下に振ってみる。
すると風魔はびくっと肩を揺らした。


……おかしい。これは絶対おかしい……。
俺様なんか分からないけど嫌な汗が背中に伝ってるよ。

俺は苦無を首から離し、自分と目の前の風魔だと思われるその子にゆっくりと「ねぇ、風魔だよね?」と聞いた。
するとその子は勢いよく首を横に振った。

はぁ!?!?!?
風魔じゃない??????
え、ちょっと待って!俺様を落ち着かせて!!!

見ればその子は大きな瞳に沢山の涙を溜めている。
ああぁぁぁああああ何この罪悪感!!!!!!!

「ちょっ、ちょっと待って!!じゃああんたは誰だ!?」

思わず取り乱してしまった自分の行動をなんとも思うことなく俺様は身振り手振りで幼い男の子に話し掛けた。
するとその子は小さな声で「紅太郎」と言った。

紅太郎??こうたろう???明らかに小太郎に「う」をつけただけの名前。
風魔本当に俺様のこと騙してないの????っと、もうやけになって、殺気を向けて苦無を風魔、じゃなくて紅太郎の心臓に向けて振り下ろすと、紅太郎は動くことなくじっとしていて、思わず本当に心臓に苦無を刺すところだった。あぶっねぇーーー。


とりあえず分かったのは彼が風魔では無いということ。
しかしその次に疑問に思ったのがじゃあ彼は一体何者だということだ。

いや、自分の中で答えは出ている。
しかしその事を自分で認めてしまうのを渋った。


もしかして、いや、もしかしなくても、彼は風魔の子供なのでは無いのだろうか。


そう考えていると遠くから紅太郎を呼ぶ老夫婦の声が聞こえた。
とりあえず風魔との確認の為俺様は紅太郎の前から姿を消した。





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