私が生まれてから1週間。立派に男の子として育ってます!!!

私は母の腕に抱かれて私は時を過ごしていた。ほとんど寝て食べて泣いての、この生活はあっという間に時間が過ぎている。
家には私と母以外に誰かが居る様子はない。時間になったら誰かが食べ物を持ってきてくれる音だけがする。
それでも私に話しかける母はとても嬉しそうだった。

だけど外から聞こえる、「あいつは忌み子だ」「鬼子だ」という大人の声。
私の容姿は見えないけどきっと醜い姿なのだろう……ああ、嫌だな。折角生まれ変わったのだから綺麗な容姿に生まれたかった……。

だが、私に話しかける母の声は凄く嬉しそうで、母を悲しませるようなことはしたくは無かった。母が生きている間は立派に育ってしっかり親孝行しようと考えた。


しかし、私はこの世界に生まれてからある疑問が離れない。
それは電化製品や車などの音がしないこと。それと言葉遣いが古いこと。使っているものが明らかに古いこと。
ただ単に、ここが田舎で凄く貧乏な家だったら分かるんだ。だけど、流石に考えは拭いきれない。
その考えというのが、私はもしかしたらタイムトリップをしてしまったのではないのだろうかという事。


そして、その答えが出たのは二ヶ月ほど経ってから。
やっと見えるようになった目で生まれた世界を見てみると、お母さんは着物!!!そしてめっちゃ美人!!!
家は田舎のおじいちゃんおばあちゃん以上の昔の家!!!外は森!!!
という、完璧なタイムとリップを果たしました。私。


「紅太郎」


お母さんに名前を呼ばれて私は後ろを振り向いた。
紅に長男だからだろうか太郎。何故紅という字なのかというのは良く分からないが、太郎は多分長男だからだろう。呼び方はこうたろう。凄く綺麗な名前だと思った。

綺麗な名前を貰って満足な私はお母さんに抱きついて笑顔を見せた。
きっとわが子には笑顔で居て欲しいと思うから私は笑顔で居ることが多い。
それでお母さんが少しでも喜んでくれるなら、と、私はたくさん笑顔を向けた。

母は私を抱き寄せ頬を摺り寄せた。
美人なお母さんの顔がドアップなのは凄く心臓に悪いのだけど、美人に顔を近づけさせられて嫌な気はしない。その前にお母さんだし!


なんてしていたのは今日の昼間のこと。
私は今、お母さんと一緒に夜の道を歩いている。
何故お母さんがこんな夜道を歩いているのか、荷物を持って行くのか分からなかった。そしてもしかしたら捨てられるのでは無いのだろうかという不安。
私は目だけが見える状態で布に包まれていてその隙間から手をだし、その小さな手でお母さんの着物を握り締めた。


歩き続けていたお母さんの足が止まったのはすっかり太陽が昇りきった朝だった。
茶屋があってそこの椅子にお母さんは腰を下ろした。
お茶と団子を頼むと一息ついた母に一体どこに行くのか聞けない私はもどかしく感じた。
お母さんは私を抱きかかえると目を合わせて「あなたは私が守るから大丈夫」と言って酷く悲しい笑顔を見せた。
その笑顔を見たとき、私は母の強さを見た。


――――――――――――


それから三年の歳月を過ぎた。
私と母は同じところに留まることなく、暫く経つと夜の闇に紛れるように別の場所へと姿を消した。
母からは何も聞いていない。いや、何も聞けなかった。
母は私に何不自由なく育てようと頑張ってくれた。私はそれに答えるように立派に成長していった。
そしてもう自分で歩けるようになる頃には、何故私が鬼子だと言われていたのか分かった。
私の髪が燃えるように紅のだ。まるで鬼のような。


みな口々に鬼子という理由が分かった。
それに母に何も聞けないと言ったが流石に子供じゃないので理由くらいわかる。
私のせいだ。
私がその場に居れば村から邪険され、私を殺そうとする。そうなる前に母は私と共に村から姿を消していた。
私は母に感謝した。心優しい母でよかったと心から思った。
だから私は母に一日一回は「ありがとう」を言うようにしている。感謝を少しでも形に表したかったから。

それにしてもこの髪、この髪のせいで私と母がこういう生活を送っているというのに何故か髪の色は嫌いにはなれなかった。
その理由のうちの一つに母の事がある。
母はいつも言うのだ。私の父がどれほど素晴らしい方だったかを。とても綺麗だったと。髪は父様譲りなのよ。と。そう言って母は私の髪を撫でる。
この紅の瞳も父様と一緒だと言って、私の瞳を覗き込む。だから嫌いになれなかった。

たとえこの髪が鬼のものでも、何を言われようと母の存在があったから私は好きであり続ける。

「かあさま、とうさまはどこにいるの?」

前に耐えられなくて言ってしまったことがある。
母は驚いたような顔をしてから、ふっと泣きそうな顔をして私を抱きしめた。
そして「ごめんね」と言い続けた。


けれど何となくその意味が分かったのは暫く経ってからの夜。
母が寝れなくて起きていた時だ。自分は寝たフリをしていたがその時母の呟きを聞いた。私の頭を撫でながら

「ごめんね、貴方に父様は居ないの。あの人はきっと子のこの存在を知ったら私と共に消したでしょうから……。
あの人は邪魔になるものは全て消す。だから一人で勝手に決めて勝手に生んだんだもの……。」

「貴方は今何をしてるのでしょうか、せめて死ぬまでには一目だけでも、会いたい……」

その言葉を最後に母は泣き崩れてしまった。
私は聞いてはいけないような事を聞いてしまった。

もしかしたら私は生まれてはいけない存在だったのではないかと。
もしかしたら父様に殺されそうになったのだと。
自分は生まれてはいけない存在のように言われているようだった。その日の夜は私は泣きながら寝た。





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