目の前には綺麗な女の人が涙を流しながら私を見ていた。
ぽたぽたと垂れる涙が私の頬を伝う。私は動けずその人の涙を拭ってやる事さえ出来ず見つめていた。
綺麗なその人は私に一言「ごめんね」そう言って瞳を閉じた。


――――――――――

最初の出来事はいつだろうか。酷く遠い事に感じる。
私は一人家で留守番をしていた。お母さんは買い物、お父さんは仕事、弟は友達の家に遊びに行っていた。
特に何もすることが無かった私は、居間の大きなテレビにゲームを繋ぎ巷で有名な戦国BASARAをやっていた。

「ほっ!はっ!どりゃあ!!」

家に誰も居ないので安心して声を出す。いつもだったらお母さんとか「五月蝿い」って言って怒ってくるからね!
小十郎でコンボ技を決めて後ろから付いて来る政宗に「政宗様!貴方様が刀を振るほどでもありませぬな!ははっ」と小十郎に成りきりながら話しかけたりしていた。

っと、最後の敵を倒すと天下統一。
私は「勝鬨を上げろぉぉぉおお!」と雄たけびを上げながら次は小太郎でもやるかとコントローラーを弄るも喉が渇き、冷蔵庫へと飲み物を取りに行った。
だがその時冷蔵庫には何も飲み物が入っていなかった。
そう言えばお母さんが「冷蔵庫の中の飲み物何も無いから水でも飲んでて!」って言っていたような気がするようなしないでも無いような……。

さっきまでポテチを食べていたからか、飲むものがないのが分かったからか余計喉が渇いたような気がした。

水は……飲みたくない。

私の変な意地とプライドの為に財布を片手にコンビニまで歩いていくことにした。
コンビニまでは歩いて十分ほど。完全に秋になったこの時期、軽く散歩にはもってこいの気温だった。
山は完全に紅葉に染まり、やっぱり山はいいなぁ、などと考えながらコンビニへと向かった。



「ありがとうございましたー」
というコンビニ店員の声を聞きながら私は買ったばかりのペットボトルのキャップをひねる。
その時、ドンっと大きな音がして自分の体が吹っ飛んだ。
何が起こったのか全くわからない私。ゆっくりに見える世界の中、さきほど私に挨拶したコンビニ店員がコンビニの中で目を丸くしてこちらを見ているのが分かった。
酷くゆっくりの世界。冷静な頭の中私は、あ、死ぬわ。なんて呟いていた。ああ、ツイッターに呟きたい。


最後まで馬鹿な考えの私は固いコンクリートに頭ごと落ちるのと同時に暗い世界へと沈んで言った。

――――――――

どのくらいの時間が経ったのだろうか。目を閉じたままの私の頭はさっきと同じぐらい冷静だった。
よく分からないが温かい何かに、包まれている。そして、どこからか聞こえる安心する音。ここは一体どこなのだろうか。

そう考えた時、どこからか声が聞こえた。鈴のように綺麗な声だ。
耳を澄ますと聞き取れる。「はやく生まれてこないかな」と言う鈴のように綺麗で優しい声だった。
こんな声なのだからきっと顔も美人さんなのだろうと一人思った。
しかし私は一体どこからこの話を聞いているのだろうか。声は上から、くぐもった様に聞こえる。


そこで私は冷や汗のようなものが(現実には流していないが)背中に伝ったような気がした。
もしかしたら、もしかすると。
そんな考えを抱きながら私は何故か動き辛いこの場所で小さく動いた。すると、脚が何かに当たった。

「あ、今お腹を蹴った」


やっぱり私かーーーーーーーーーー!!!!!私がこの人の赤ちゃんか!!これが俗に言う輪廻転生だかなんだかですね!!分かります!!!
うわっ、どうしよう!私赤ちゃんになるの!?また人生やり直しなさい!見たいな??


ぎゃひーーーっと、一人ジタバタしていると急に何かに頭を引っ張られるようなそんな感じがした、と思ったら上からお母さんになるだろうと思われる人が「うっ」と苦しそうな声を上げた。

えっ、えっ、もしかして

「生まれるっ」

あーーーーーー!!!!私産まれる!!!!!!!!!


という事で何か手伝える事は無いかと、思い私は狭いそこをぐるぐると回るように出た。
すると肺にこの体初の酸素が入ってきた。しかしその苦しさといったら!!泣くほどではなかったけど産声を上げなくてはいけないので泣いた。とりあえず自分が産まれた事とお母さんおめでとう!という気持ちで泣いた。


しかし、普通生まれたらおめでとうございます!とか言うものじゃないの?なんか何も声が聞こえない。
等と考えていると、多分産婆さんらしき年をとった女の人の「お、鬼子じゃ!」という悲鳴に近い声を上げて私を布の上に置いた。

え?鬼子???
なんのことだかさっぱり分からないんですけど??

頭の上にクエスチョンマークを浮かばせながら私は泣くのを止めた。
するとあの綺麗な女の人の声、お母さんの声がした。

「……あの人の子供だわ…」と、とても疲れきったような声。

???誰かこの状況を説明してくれる人は居ませんか???
私生まれて間もない為目が見えないんです。

「…元気な、男(おのこ)…」

………あ、ほんとだ、ち●こ付いてる……。

「あの人の様に、強いこに育つのよ……」

と、今度は産婆さんが「あんたこの子どうするんだい!?この子は災いしか呼ばないよ!!」と声を荒げて言う。

ちょっ、待って!話しが急展開過ぎる!!!!
頭の中でぎゃーぎゃー喚いていると、私は温かい誰かの腕の中に包まれていた。

「この子は、私が守る」
「あたしゃあ知らないからね!」
「ええ、私がこの子を一人で育てて見せる」


そんな会話を聞きながら私は急な眠気に襲われ意識を手放した。





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