氏政様の部屋を出ると、私と父様はこれから住むという部屋に向かった。
着いた部屋は程よい大きさの部屋で、これから生活していくには十分すぎる部屋だった。
部屋に行くと父様はすぐに私に向き合いジェスチャーで待て、とされた。私は静かに頷くと父様はふわりと風のように消えた。

父様が居なくなったのを確認してから私はその場に寝転んだ。
ばくばくと五月蝿い心臓。それを抑えるように片手で握り締めれば私は今日起こった事を思い出していた。
今日は今まで以上に沢山体験したような気がした。こうして父様と一緒に過ごせる。まるで夢のようだと。嬉しさに綻ぶ顔。
私はむくり、と起き上がると部屋がどんなものなのかを見て回った。
前の世界では見ることが出来なかったものや、庭の風景などを見ていると、父様が私の目の前に降り立った。

父様の手には様々な武器が風呂敷に包まれていた。それが一つや二つではない。結構な数がそこにあった。
私は武器の多さに吃驚していると、父様はそれを部屋に持って行き、暫く部屋に篭ると出てきた時にはそこは立派な武器室になっていた。
与えられた部屋は全部で二部屋なのだがその一室は危険だからということで父様に出入り禁止令を出された。
見るからに危険なその部屋、きっと罠も仕掛けられていることだろう。


するとそこで、廊下から足音が聞こえてきた。
誰だろうと、父様の後ろにまわり廊下を見ると外から「入るぞい」という声が聞こえてきた。その声は紛れも無い爺様の声で少し安心した。
父様は爺様が入ってくると頭を垂れ跪く。私もそれを真似て頭を下げた。
すると中に入ってきた爺様が「よいよい」と言って頭を上げるよう言ってきたので二人して頭を上げる。


父様の服をぎゅっと掴みながらなんだろうと爺様を見てると、爺様は私ににこりと微笑んで頭を撫でてきた。
それが照れくさくて私の頬は少し赤く染まる。


「紅太郎に土がついとるのお。どれ風魔、二人で湯あみでもしてきたらどうぢゃ?」


湯あみというのはきっとお風呂のことだろう。
私はこちらにきてから風呂という風呂に入ったときはそんな無かった。
だから私の体は泥だらけだ。足は洗ったけど。
父様は無表情で爺様を見ていたが爺様が「わしはもう入った、二人で入って来い。紅太郎を綺麗にしてくるんぢゃぞ」と
父様の返事も気かずに爺様は一人で決めてしまった。だけどそんな勝手な爺様は私にとってありがたかった。
泥だらけできっとそこいらを汚してしまうと思ったからだ。心の中では「ありがとう爺様!!!」と胸にダイブする勢いだが、シャイな私はそんなことをせず父様と二人爺様の背中を見送った。


背中も見えなくなった頃、父様が動き出した。
見れば手拭いと着物を持っている。見ればいつの間にか用意したのか、私用と思われる小さな着物もその手にあった。
やったお風呂だお風呂だ!!
なんて軽くスキップしそうになりながら私は父様と二人お風呂へと向かった。


しかし、お風呂に着くと私はある重大なことに気が付いた
お風呂つまり、お風呂というのは裸になって入るもので、裸で、そう裸……。つまり、つまりだなぁ父様のいつもきっちり着ている服が無くなって鍛えられた体、そしてあわよくば伝説の伝説が(下ネタ)見れちゃうかもしれないという事で!!!!!!


ぎゃぁあぁぁああああああ破廉恥ぃぃぃぃぃぃぃいいいいいい!!!!!
そんなこと想像しただけで発狂してゴロゴロばったんばったん!!!!
明らかに動揺する私に、父様は何を勘違いしたのか、私がお風呂が駄目だと思ったらしい。
だから私の目の前にきてぎこちなく私の頭を撫でた。そうさっき爺様がしたように。しかし、全裸で。大事なことなのでもう一回言う。全裸で、だ。


着物をまだ着ている私と対照的にそりゃあもう何も纏っていない生まれたままの姿で私の目の前に居られると…その、身長的に目の先に伝説が……見てない!!見てないけど感じるんだ!!!!
私は父様に着物を脱がしてもらって(別に自分の裸を見られるのは構わないんだ!)父様に抱えられて(肌と肌の密着!)風呂の中へと入る。


父様は私を床に座らせると桶に湯を汲んで私に髪からそのお湯をかける。
数回それを繰り返しなにやらシャンプーのようなものを使って髪と身体を洗ってもらった。
それがあまりにも気持ちよすぎて、しかしだからと言って後ろの父様に寄りかかると大変な事になるので三角座りで頑張った。


暫くたって私が綺麗になったのを見計らって父様は私を湯の中に入れて父様は自分の髪と身体を洗い始めた。
私は父様の方を見ないように反対の方を見ながら湯の中をスィーと泳ぐように遊んでいれば洗い終わった父様が湯の中に入ってきた。


その時に見てしまった伝説を私は忘れない(遠い目)


入ってきた父様は私を捕まえると自分の腕の中へと運んだ。
もう何か吹っ切れた私は父様にされるがままで、とりあえず父様と向かい合うように父様の上に座った。
ぺったんこになった父様の髪は後ろに撫で付けられていて俗に言うオールバックになっていて父様の顔が良く分かった。

息子の私は言うのもなんだけど相当のイケメンだと思う。本当に。
紅の髪に紅の瞳、いつもは隠されている顔がその色に凄く合っていて、私は凄くドキドキした。
それを父様に悟られまいと目を逸らしていた私だが、父様は私をジッと見てきて凄く居心地が悪いです。


なんだろうと思い切って父様を見るとやっぱり父様の瞳は私をじっと見ていて、逸らすに逸らせなくて私はそのまま父様と見つめあったままにした。
すると父様はすっと手を伸ばし私の前髪を自分と同じように後ろに撫で付けた。


すっきりする視界で再び父様と視線を合わせる。
だけどいつまでたっても父様は視線を外さないで私を見てくる。私は段々と心臓が押し潰されそうな感覚が限界にきて視線を逸らして
目の前にあった父様の厚い胸板へと上半身をダイブさせた。

お湯のせいでぴったりとくっつく肌と肌が妙に心地よくて寝てしまいそうだった。いや、半分寝てた。
そんな半分寝た状態の私を父様は抱え、湯浴みから出ると着物を着せて、また私を抱えて部屋へと向かって歩いた。
父様の程よい揺れと、温まった身体というナイスコンビネーションのせいで眠気に勝てなかった私は気が付いたら布団に寝かせられていて外は朝日が昇っていた。



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補足:伝説の伝説といのは分かりますよね!!!下ネタですよ!!!




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